【1月27日 AFP】中国・湖北(Hubei)省を中心に感染が拡大している新型コロナウイルスへの対策に追われる香港で26日夜、感染が疑われる人を隔離して検疫を行う臨時施設として未入居の公営住宅を使用する政府計画に対し、反対する地元住民らが建物に火炎瓶で放火するなどして抗議する騒ぎがあった。

 香港でもこれまでに6人の感染者が確認されている新型ウイルスは、2003年に香港で300人近い死者を出した重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスに類似している。林鄭月娥(キャリー・ラム、Carrie Lam)行政長官の危機対応を非難する声は日に日に高まり、本土との境界封鎖を求める医療専門家や政治家もいる。

 香港政府は25日、最高レベルの警告である「緊急事態」を宣言。流行の発生地である湖北省からの立ち入りを当面禁止するとともに、感染リスクを減らす取り組みの強化を発表した。

 市内の粉嶺(Fanling)に新築された未入居の公営住宅を臨時検疫施設として使用する計画もその一つで、感染者と接触した恐れのある人が検査終了まで滞在したり、治療に当たる医療関係者が家族への感染を避けるため利用したりすることが想定されていた。

 公営住宅前では26日、地元住民ら数十人が周辺の道路を封鎖するなどして検疫施設の開設に抗議。警察によると同日夜、複数の火炎瓶が建物に投げ込まれた。現場に居合わせたAFP写真記者によれば、公営住宅2棟の出入り口付近で激しい炎が上がったが、間もなく消防隊が鎮火した。

 機動隊が到着するとデモ隊は解散したが、一部の地元住民は警官らと口論になり、警官が催涙スプレーを使用した。

 香港衛生防護センター(CHP)は、この公営住宅を検疫施設として使用する計画の中止を発表した。

 CHPは既に自然豊かな郊外にあるキャンプ場1か所を検疫施設として使用しており、さらに大型住宅団地に隣接していないキャンプ場2か所にも検疫施設を開設する予定だ。だが、こうした隔離施設で治療に当たる医師や看護師の宿泊施設を確保するのが難しい状況だという。(c)AFP