【1月28日 CNS】中国・四川省(Sichuan)アバ・チベット族チャン族自治州(Ngawa Tibetan and Qiang Autonomous Prefecture)アバ県(Aba)の芸術伝承基地の2階にある画室で、2000年以降生まれの若者、ゲンジェさんが左手でおわんを持ち、右手で絵筆を使ってチベット伝統絵画である「タンカ(Thang-ga)」を一心に描いていた。しばらくすると、カンバスの上に緑色のオリーブの枝が出来上がった。

 チベット族の独特な絵画として、タンカには1000年を超える歴史がある。題材は歴史、政治、文化、社会生活など多くの分野が含まれるため、「チベット文化の百科全書」ともいわれる。

「タンカの制作は時間がかかり、半年から長いものでは数年かかるので、タンカづくりは一種の修行なのです。孤独に耐えることが求められます」と2016年にこの芸術伝承基地にやってきたソランツォマさんは言う。「卒業したら、故郷の若爾蓋県(Ruoergai)に戻って、故郷の景色をタンカに描きたいです」と語った。

 現在、アバ県には芸術伝承基地が3か所あり、貧しい農牧民の子どもを対象に無料で開放されている。画筆を持つチベット族の若者が増えるにつれ、グラ・パンジダ派タンカの第7代伝承者であるテブカさんが作ったタンカの教材は、2019年に8回目の再版となった。

「昔は、タンカ諸派の技術は門外不出で、タンカの教材を作るなどあり得なかった」。50歳を過ぎたこの無形文化財の伝承者テブカさんは、複雑な気持ちだ。

「多くのタンカの画派は、伝承の仕方が保守的だったため伝承が途絶えてしまった。ここでは、若者を受け入れたことで、タンカの伝承は新たなチャンスを迎えた。14歳の時に村に1台のトラクターがやって来て、トラクターの絵を描いて玄関に貼ったら、母親から怒られたことを覚えている。当時、みな、新しいことは受け入れようとしなかった。今では、どんな絵でも描ける時代となった。伝統のタンカは『黄金時代』を迎えたと言える」と語った。(c)CNS/JCM/AFPBB News