【1月25日 AFP】米オハイオ州西部のディファイアンス(Defiance)にある創業100年近い老舗ダイナー「キスナーズ(Kissner's)」。店内では、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の弾劾裁判を生中継するFOXニュース(Fox News)の番組がテレビで流れる一方で、別の画面では裁判に関心がない大多数の客のために気象専門チャンネルや料理番組が映されている。

 トランプ氏支持者の3代目店主カール・キスナー(Karl Kissner)さんは、自分の政治的意見を客に押し付けはしないと語る。「大抵、人々は無視したり、顔を上げてテレビを見やっても『ああ、またこれか』と言って会話を続けたりする」

 AFPの記者チームは米選挙シーズンの開始に合わせて政治に関する国民感情を探るべく、首都ワシントンから車を走らせ、2月3日に大統領候補を選ぶ最初の党員集会が行われるアイオワ州に向けて取材旅行を行っている。

 製鉄業の州ペンシルベニアの理髪店から、エリー(Erie)湖畔にあるワイナリーまで、弾劾裁判は至る所でテレビ中継されているが、これに動じる人はほとんどいないようだ。

 CNNが20日に公表した世論調査では、米国人の51%が上院によるトランプ氏罷免に賛成であることが示された。しかし別の世論調査では、大統領選の激戦地である州の住民が比較的冷めた見方を持っていることが示されている。実際、多くの人は無関心といった様子だった。

 ペンシルベニア州チャールロイ(Charleroi)の食堂で、自動車修理工場の経営者アルビン・ロス(Alvin Ross)さんは「弾劾手続きは理解できない。とても多くのステップがある」と語った。一方で、弾劾についてもっと知りたい気持ちもあり、トランプ氏には嫌悪感を抱いているという。黒人のロスさんは、トランプ氏の発言が人種間の緊張を高めたと指摘した。

 同州ピッツバーグ(Pittsburgh)でウーバー(Uber)運転手として働く共和党支持者テリー・マギル(Terry McGill)さん(67)は、弾劾によりトランプ氏に対する見方が「絶対的に向上した」と語る。「この戦いを始めたのは民主党側だ。既に分断はあったが、国の溝をさらに深めた」

 同じくピッツバーグ在住の広告コピーライター、トレイシー・ボール(Tracy Ball)さんは、トランプ氏のふるまいは国家の恥だと考えており、同氏に対する責任追及には賛成している。だが、民主党によるトランプ氏弾劾の試みが最終的にどんな結果につながるかは確信が持てないという。

「むしろ彼の支持層を奮い立たせ、彼に投票したい気持ちを強めるかもしれない」。ボールさんはさらに、「勝ち目のない弱者は好かれる。トランプは弱者とは呼べないけれど、被害者ぶるのがとてもうまいのは確か」と笑った。

 ディファイアンスのダイナー店主のキスナーさんは、人々にもう少し礼儀があったらよいのにと願っている。「この国のいいところは、私は街頭に置いた箱に立って声を限りに叫ぶことができるし、あなたも同じように私に叫び返すことができることだ」

「問題は、その箱から降り、握手して立ち去ることができるべきだ、ということ」 (c)AFP/Shaun TANDON