【1月26日 東方新報】中国・春節(旧正月、Lunar New Year)休みを前に、武漢(Wuhan)で発生が確認された新型コロナウイルスの感染は瞬く間に広がり、死者は40人以上に上った。中国当局は23日までに武漢の事実上の封鎖を決断し、航空、鉄道などの主要公共交通機関は一時停止が命じられた。このため「家族で過ごす春節」が危ぶまれたが、一方で「新たな絆」も生まれている。

 中国国家鉄路集団(China Railway)は21日、全線で新型コロナウイルス感染予防の徹底を要求。主要駅での赤外線AI体温検測システムや手持ち体温計による旅客の検温の徹底、車両、待合室の消毒の徹底を指示。旅客は乗車ごとに消毒するよう求められている。さらに駅や列車の空調の検査、修理、消毒なども徹底して、待合室や車内の空気の正常化にも取り組んだ。

 広州鉄路集団(Guangzhou Railway Group)は24時間の防疫当直制度を導入し、鉄道防疫応急処置チームを設置。地元政府の衛生健康委員会や疾病コントロール部門との連絡メカニズムをつくり、適時に感染状況を掌握し、対応できるようにしたという。また、武漢市衛生防疫工作チームの要請に従い、24日までに購入された武漢発着列車のチケットに対する変更・払い戻しについては手数料を取らないという。

 国務院新聞弁公室が22日に行った記者会見によると、国家衛生健康委員会を中心に、32の省庁が参加する連合コントロールメカニズムが発動された。縦割り行政の限界を克服し、防疫コントロールのために効果的な協力態勢を形成し、効率のよい防疫対策を実現する。

 国家衛生健康委の李斌(Li Bin)副主任によると、武漢市に対して、馬暁偉(Ma Xiaowei)主任が15日に現地に赴き、防疫措置をさらに指導。飛行場、駅、長距離バスターミナルの検温体制、発熱者に対するスクリーニングなどの強化、スーパー、レストランなどを重点的に監督・管理し、野生動物の取引行為を厳しく取り締まることなどを指示。人が集まる大型イベントの管理、中止措置などを強化し、愛国衛生キャンペーンをメディアを通じて呼びかけるように指示したという。

 こうした徹底した措置が取られたため、春節休みに故郷・武漢に帰ろうと準備していたり、あるいは武漢から他の地方に里帰りや旅行に行こうと計画を立てていたりしていた人たちは、身動きが取れない状況になった。

 長江日報(Yangtze Daily)は、武漢への里帰り準備をしていた人たちに取材している。ある北京在住の女性は、感染の拡大状況をみながら長らく迷っていたが、21日に列車のチケットの払い戻しを決断した。

 米国在住の中国人女性は、故郷である武漢の状況がわからないため、まず広州(Guangzhou)に飛んだ。だが母親からは、武漢に帰らず広州で遊んできなさいとアドバイスされた。そして、広州で食べたごちそうや観光の様子を毎日のようにSNSにアップロードし、やり取りをしているので、距離を感じないという。

 突然の新型コロナウイルス肺炎の拡大阻止には、春節の帰郷を楽しみにしていた多くの人たちに多少の犠牲を与えたのは確かだが、中国家族の絆は深く、ネットなどを使った心の団らんまでは奪えていないようだ。(c)東方新報/AFPBB News