【1月23日 AFP】国連(UN)の独立人権専門家は22日、米小売り・IT大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)のジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)最高経営責任者(CEO)の携帯電話が、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)が保有するワッツアップ(WhatsApp)アカウントを通してハッキングされていたとの情報を受け取ったと発表した。この疑惑についてサウジ側は「ばかげている」と否定している。

【図解】世界長者番付の頂点に立つベゾス氏

 いずれも国連特別報告者のアニエス・カラマール(Agnes Callamard)氏とデビッド・ケイ(David Kaye)氏はスイス・ジュネーブで出した声明で、「ベゾス氏らの携帯電話に対するハッキング疑惑は、米国や関連当局による迅速な調査を必要とするものだ」と指摘。「われわれの受け取った情報は、米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)のサウジアラビア関連報道に影響を与える、あるいはそれを沈黙させることを目的としたベゾス氏の監視に、サウジ皇太子が関与していた可能性を示している」と述べた。

 ベゾス氏は同紙のオーナーで、2018年10月にトルコ・イスタンブールにあるサウジアラビア領事館内で殺害されたサウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏は同紙の寄稿コラムニストだった。

 ハッキングは18年5月、サウジ皇太子のアカウントからベゾス氏の携帯電話に送信されたMP4動画ファイルを通じて行われ、数か月にわたって携帯電話からデータがひそかに盗み取られたとみられている。ベゾス氏と皇太子はこの1か月前に番号を交換していたという。

 カラマールとケイの両氏は、ハッキングの状況とタイミングは、カショギ氏殺害の計画について「サウジ皇太子が命令、誘導または少なくとも認識していた疑い」に対するさらなる調査を行う根拠となると説明している。

 カラマール氏は超法規的・即決・恣意(しい)的処刑に関する特別報告者で、昨年のカショギ氏殺害に関する独立調査を主導した人物。調査では、同氏殺害へのサウジ皇太子関与を示す「信じるに足る証拠がある」との結論が出されたが、サウジはこの主張を真っ向から否定している。

 在米サウジ大使館はツイッター(Twitter)で「われわれがジェフ・ベゾス氏の携帯電話ハッキングの背後にいるとの最近の報道はばかげている」と主張。「すべての事実が明らかになるよう、これらの主張に対する調査を求める」と述べた。(c)AFP/ Dario THUBURN