【1月21日 AFP】ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領(67)が20日、憲法改正案を議会に提出した。

 プーチン氏はわずか数日前に行った年次教書演説で憲法改正の意志を明らかにしていた。すかさず提出した憲法改正案では、次期大統領の任期短縮や、大統領権限の一部を下院や国家評議会(State Council)に移すことなどロシアの政治体制の大幅な改革が示されている。一方で、自らの任期終了後も権力掌握を維持したいプーチン氏による「改憲クーデター」だと批判する声も上がっている。

 連邦議会で迅速に可決される見通しの改憲案は、プーチン氏の計画にとってどのような意味を持つのか。いくつかの要点をまとめた。

■大統領任期は通算2期まで

 改憲案では、大統領の任期は通算2期までに制限するとしている。現行のロシア憲法では大統領の任期は、連続2期までと規定されている。プーチン氏はこの抜け穴を使い、連続2期を務めた後に1期だけ首相に就いた後、大統領に再任し、現在通算4期目を務めている。改憲により、プーチン氏の後継者は同じことができなくなる。

■新国家評議会

 改革の一環として、新大統領は新たな「国家評議会」を組織すべきだとしている。

 国家評議会は現在も地方知事や政治任用者で構成される大統領諮問機関として存在しているが、その重要度は低い。

 改憲案では、新国家評議会は国家機関の相互調整を行い、「内政および外交政策の主な方向性」や「社会・経済発展の優先分野」を決める役割を担うとしている。さらにプーチン氏がこの新評議会の議長に納まるのではないかとの臆測も浮上している。

■国際法より憲法優先

 改憲案では、ロシア憲法はいかなる国際的な司法判断よりも優先されると規定。ロシア憲法と矛盾する国際的な司法判断は、適応されないとしている。

 ロシアはこの規定を正当化の盾として、欧州人権裁判所(ECHR)などの国際裁判所が下す裁定の執行義務を拒否する可能性がある。欧州人権裁判所への訴えは現在、多くのロシア人にとって最後の申し立て手段となっている。

■外国の旅券・滞在許可の保有者が公職に就くことを制限

 改憲案には、公職の人事に関する新たな制限も加えられている。外国のパスポートや滞在許可証を持つ人、および長期間国外に在住していた人々は大統領以下すべての公職に就くことができなくなる。

 また、大統領になるためには在住期間25年以上のロシア永住者である必要がある。

 この条項は、米国への留学経験がある野党勢力指導者のアレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏のような人々を標的にしたものではないかと疑う声もある。

■連邦議会への権力集中

 改憲案によって、大統領は権限の一部を下院へ委譲する。これにより下院が首相候補や閣僚候補らを承認し、その後大統領が正式に任命する。

 だが、国防、国家安全保障、内政関連の大臣や高官は、大統領が上院と協議の上、任命する。また最高裁の裁判官や検察官は大統領が指名し、上院で承認される。(c)AFP