【1月21日 AFP】気候変動の深刻な打撃を受けている国々からの難民を強制送還する各国政府は、人権義務違反に相当する可能性があると国連(UN)の専門家委員会が20日、指摘した。

 規約人権委員会(UNCCPR)に所属する独立専門家らは、太平洋の島国キリバス出身のイオアネ・テイティオタ(Ioane Teitiota)氏による訴えについて、強制力はないが詳細に検討した上での判断を示した。

 テイティオタ氏は2013年にニュージーランドに難民認定を求めたが、2015年にキリバスへ送還されたことについて異議を申し立てていた。

 同氏は、海面上昇によって居住不可能となったキリバスの他の島々の住民が流入してきたことが原因で自らの故郷である南タラワ(South Tarawa)が人口過密状態となり、土地をめぐる争いが起きたり安全な飲料水の入手が難しくなったりしていると主張している。

 UNCCPRは、同氏の生活は差し迫った危険に直面しているわけではないが、「環境の悪化が個人の幸福に悪影響を及ぼし、生存権を脅かす恐れがある」と認めた。

 キリバスを含む太平洋の複数の島しょ国は海抜数メートルしかなく、世界の中でも最も気候変動に対して脆弱(ぜいじゃく)だと考えられている。

「国全体が海面下に沈むリスクは極めて大きなものであることを考慮すれば、リスクが現実となる前の段階でのこうした国での生活条件は、尊厳を持って生きる権利と相いれない」と国連専門家らは指摘した。

 また専門家らは、亡命を認めなかった申請者らの送還を計画している国々は、亡命申請者の出身国における気候変動の影響や、亡命申請者の生存権の保護義務に違反する可能性があることを考慮すべきだと述べている。(c)AFP/Dario THUBURN