【2月22日 AFP】アラブ社会では何世紀にもわたり、格式高い伝統としてタカ狩りが行われてきた。今日、アラブ社会でタカ狩りに使われるハヤブサのほとんどは、スペインから輸入されている。スペインは世界トップのハヤブサ輸出国でもある。

 アラブ社会の上層階級では、ハヤブサは大変な値打ちものだ。買い手が1羽に数万ユーロ(数百万円)を払うこともあるという。

 スペインの首都マドリードの北方約150キロ、乾燥地帯のフエンテスピナ(Fuentespina)の飼育所。毎年およそ150羽がここから輸出される。輸出先の大半は中東だ。富裕層が趣味の競技や狩猟のために購入するという。

 15年以上にわたりハヤブサを飼育してきたフアン・アントニオ・サンチェス(Juan Antonio Sanchez)さんは、「羽全体が完璧でなければならない」と語り、カタールに輸出予定のハヤブサを誇らしげに見せた。サンチェスさんは、パートナーのベアトリス・ドミンゲス(Beatriz Dominguez)さんと飼育所を運営している。

 飼育所では、驚くほど多くの交配種が飼育されている。最も大きく高雅な種であるシロハヤブサを、最速のハヤブサと交配させるといった例がある。

 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES、ワシントン条約)によると、スペインは2018年のハヤブサの最大輸出国で、輸出先のほとんどが湾岸諸国。輸出数はおよそ2800羽で、英国の2500羽を優に上回る。

 長く先細の羽を持つハヤブサは、優れた飛行能力を備えている。世界最速の動物で、滑空時の速度は最大で時速300キロメートルだ。

 スペインで飼育する利点は、中世までさかのぼるタカ狩りの伝統だけではない。ハヤブサは通常、より高緯度で涼しい地域に生息しているが、暑さと乾燥した気候のスペインで飼育することによって、より高温の中東でもハヤブサが順応しやすいという。(c)AFP/Adrien VICENTE