【1月19日 AFP】形状を変化させられる翼のおかげで、飛行機よりも早い飛行や急角度での旋回、効率的な滑空ができる鳥。発明家たちは航空機時代が始まって以来、そんな鳥のように俊敏に飛ぶ飛行機の建造を目指してきたが、実現に一歩近づいた。

 米スタンフォード大学(Stanford University)の研究チームは16日、普通のハトの死骸の翼を研究し、その成果を用いて本物の羽根40枚で作られた翼を持つ無線操縦ロボット「ピジョンボット(PigeonBot)」を製作したと発表。研究成果をまとめた論文2本は、学術誌「サイエンス(Science)」と「サイエンス・ロボティクス(Science Robotics)」に掲載された。

 両論文の上席著者であるスタンフォード大のデービッド・レンティンク(David Lentink)助教(機械工学)は、「航空宇宙エンジニアと材料技術者は、鳥と同じくらい巧みに変形する材料と翼をデザイン、製造、制御する方法について(ようやく)見直し始めることができる」と語った。

 研究チームが風洞実験でハトの翼を調べた結果、羽根の位置、翼の幅と面積の微調整を可能としているのは、手首と指の動きだと判明した。現生鳥類の翼には、3本の指がある。

 飛行試験では、手首と指を操作することで、安定した急旋回に成功した。研究チームによるとこの試験は、鳥類が主に指を使って飛行をコントロールしていることを初めて証明する証拠の一つになるという。

 研究チームは、鳥の翼の変形の仕組みも調査。面ファスナーのような働きをするかぎ状の微細構造によって隣り合う主翼羽をつなぎ合わせることで、翼が構成されていることを発見した。微細構造は翼を広げる時にはしっかり固定され、翼を畳む時には緩み、広げた翼を補強し、乱気流にも耐えられるようにしている。

 研究チームはハト以外の鳥類についても、ほとんどが微細構造を持っていることを確認。ただしフクロウは例外で、微細構造がないおかげで他の鳥よりも静かに飛ぶことができるという。

 レンティンク氏によると、微細構造はファッションから医療、航空宇宙科学まで幅広い分野に応用可能なので、研究チームの将来の研究分野として検討しているという。

 映像はスタンフォード大学提供。(c)AFP