【1月21日 AFP】米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が「権力乱用」と「議会妨害」の二つを問われ、米上院の弾劾裁判に直面している。

■ウクライナ疑惑

 事の発端は昨年初め、トランプ氏個人の顧問弁護士ルドルフ・ジュリアーニ(Rudy Giuliani)氏がウクライナに対し、同国の首都キエフを拠点とするエネルギー企業、ブリスマ・ホールディングス(Burisma Holdings)を捜査するよう圧力をかけ始めたことにある。同社はトランプ氏の政敵である、民主党のジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領の息子、ハンター・バイデン(Hunter Biden)氏が5年にわたって役員を務めていた会社だ。

 ジュリアーニ氏はまた、2016年米大統領選でウクライナが民主党を支援したという偽りの陰謀説についても調査を求めた。

 弾劾訴追決議(起訴状に相当)によれば、トランプ氏はバイデン氏に対する選挙での勝算を高めるために、この二つの調査を求めたという。

 トランプ氏はさらにウクライナに対する圧力を強めるために、昨年5月14日にウクライナで行われたウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領の就任式へのマイク・ペンス(Mike Pence)米副大統領の出席をキャンセルした。

 その後、7月10日のホワイトハウス(White House)での会議でも、ゴードン・ソンドランド(Gordon Sondland)駐欧州連合(EU)大使がウクライナの高官らに対し、ゼレンスキー氏が求めたトランプ氏との首脳会談の実現は、ウクライナ側によるこれらの調査が条件だと告げた。

 米国の同盟国であるウクライナは、冷戦終結後初めてロシアによる侵攻を受けた欧州国家として東部に紛争を抱えており、米政府の公的支援に大きく依存している。

 その9日後、ミック・マルバニー(Mick Mulvaney)米大統領首席補佐官代行は、3億9100万ドル(約430億円)の対ウクライナ軍事支援を凍結。側近らにトランプ氏の指示だと語った。

 訴追決議によると、トランプ氏は7月25日の電話会談でゼレンスキー氏に対し、調査を実施してほしいという要求をはっきり伝え、それらの調査が安全保障援助と首脳会談の実現につながると示唆した。トランプ氏はバイデン親子とブリスマ・ホールディングスの名を具体的に出し、2016年米大統領選にまつわるウクライナと民主党絡みの陰謀説にも言及したという。

 それに続く数週間、ソンドランド駐EU大使はウクライナ政府にいっそう圧力をかけ、トランプ氏は軍事支援の交換条件として二つの調査を望んでいるとするテキストメッセージを送った。

 だがその後、米情報当局のアナリストが報告でこうした動きを内部告発したことが明るみに出て、トランプ氏の調査の求めにウクライナ側が応じることなく、軍事支援の大部分は提供された。