【1月21日 東方新報】中国の映画市場の勢いが止まらない。2019年の興行収入は642億2200万元(約1兆237億円)となり、年間最高記録を更新した。日本も2019年の映画興行収入の総額は、過去最高だった2016年の2355億円を超す見込みだが、総額は4倍に達する。上位作品を見ると、中国社会の「いま」が見えてくる。

【あわせて読みたい】中国の映画興行収入が600億元を突破、多様な国産映画が上位を占める

 中国の興行収入ベスト10の作品は以下の通り。

1位『哪吒之魔童降世(英題:Ne Zha)』(中国)
2位『流浪地球(英題:The Wandering Earth)』(中国)
3位『アベンジャーズ/エンドゲーム(Avengers: Endgame)』(米国)
4位『我和我的祖国(英題:My People, My Country)』(中国)
5位『中国機長(英題:The Captain)』(中国)
6位『瘋狂的外星人(英題:Crazy Alien)』(中国)
7位『飛馳人生(英題:Pegasus)』(中国)
8位『烈火英雄(英題:The Bravest)』(中国)
9位『少年的你(英題:Better Days)』(中国)
10位『ワイルド・スピード/スーパーコンボ(Fast & Furious Presents: Hobbs & Shaw)』(米国)

 一目見て分かる通り、ベスト10のうち8作品が中国映画。日本では『天気の子(英題:Weathering With You)』(140億円)、『名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)(英題:Detective Conan: The Fist of Blue Sapphire)』(93億円)と国産アニメがヒットした一方、『アラジン(Aladdin)』(121億円)、『トイ・ストーリー4(Toy Story 4)』(100億円)、さらに昨年から今もヒット中の『アナと雪の女王2(Frozen 2)』などディズニー(Disney)映画の興行収入が多いのと対照的だ。

 トップに立った『哪吒之魔童降世』は、中国の古典を大胆にアレンジしたアニメ作品。興行収入は50億元(約797億円)を超え、過去最高の収入だった2017年の国産アクション映画『戦狼2(英題:Wolf Warrior 2)』に次ぐ史上2位を記録した。中国アニメは「日本や米国アニメの模倣」と長らくいわれてきたが、近年は最新技術を駆使した独創的ストーリーのアニメが増え、この作品は一つの頂点に達したといる。

 2位の『流浪地球』は、巨大都市が氷に閉ざされるなど地球規模の災害を題材にしたSF作品で、興行収入は46億8000万元(約746億円)。6位のコメディータッチの『瘋狂的外星人』もSF作品で、「SF映画といえば外国作品」だった時代から、2019年は「中国SF映画元年」といわれた。

 4位の『我和我的祖国』は中国建国70周年を記念した映画。70年の間にあった、人々の歴史に残る7つの歴史的瞬間を再現した。5位の『中国機長』は、旅客機で機体トラブルが起きながら一人の死者も出さず緊急着陸を成功させた2018年の実話を基にした作品で、中国版『ハドソン川の奇跡(Sully)』とも呼ばれる。

 8位の『烈火英雄』も、2011年の大規模火災事故で、命がけで消火活動にあたった消防隊員の物語。これらの作品は、経済成長を続ける中国に国民が愛国心を感じ、自信を持っていることを反映している。

 7位の『飛馳人生』は、カーレースの世界を舞台に、ハリウッド並みのカーアクションを繰り広げる作品。一方、10位の『少年的你』は、学校でのいじめをテーマにした異色作だ。劇的な場面も大げさなストーリー展開もなく、大学入試を前にした少年と少女の姿を描いている。

 アニメ、SF、実話、アクション、そして心の内面を描いた作品。上位作品のラインアップは、これまでは外国映画の模倣か、外国映画に「お任せ」だった分野に進出した作品が多く、中国映画のジャンルや表現が多岐、多彩にわたっていることを反映している。

 今後の課題は、中国映画が海外にどれだけ進出できるかだろう。中国大陸の映画といえば、チャン・イーモウ(張芸謀、Zhang Yimou)監督の作品をはじめとした芸術的な作品は国際的に評価を得ているが、商業映画はまだ「中国発中国止まり」が現状だ。映画制作にかける予算や技術、ストーリーは国際的にも先端レベルに達している中、世界の「壁」を破ることができるかが今後注目される。(c)東方新報/AFPBB News