【2月26日 AFP】母親から引き離され、金属製のフックで小突かれ、時には餌も取り上げられる――タイのゾウの多くは力で飼いならされる。こうして手なずけられたゾウは、残酷な仕打ちに敏感な旅行者の目を気にして「保護区」と名を変えた、多額の利益をもたらす観光施設に売られていく。

 2歳の雌ゾウ「プロイ」は、後ろ足で不安定にバランスを取りながら鼻でボールをつかみ、バスケットのゴールに向かって投げた。これは、タイ東北部で古くからゾウの訓練をしているタークラン村(Ban Ta Klang)で、プロイが教え込まれている芸の一つだ。

 ここの若いゾウは、観光客の相手をできるよう「壊される」。タイには年間数千万人の観光客が訪れており、国獣であるゾウがスポーツやダンス、絵を描いたりする姿をSNSに投稿しようと夢中になって撮影する人も多い。

 タークラン村で何世代にもわたりゾウと仕事をしてきた村人たちは、調教は安全上の理由から行っているもので、必要以上の力は使っていないと話す。

「傷つけるために育てているわけではない…頑固でなければ、私たちも何もしない」と、ゾウ使いのチャリンさんは頭をいとおしそうになでながら、プロイは家族の一員だと語った。

 チャリンさんは、父親や祖父から受け継いだこの仕事で、月約350ドル(約3万8000円)を稼いでいる。

 だが動物保護団体は、2歳の子ゾウを母親から引き離すといった方法は、残酷で時代遅れだと批判している。

 あまり知られていないが、加熱するゾウの観光化には不透明な部分が多く、旅行業者や観光客の目から隠された一面も存在する。