【1月15日 AFP】2019年の世界の海水温度が記録史上最高となった。科学者らが14日、発表した。人為的な温室効果ガス排出による海洋温暖化の進行ペースがますます速くなっており、地球の気候に破滅的な影響が及ぶおそれがあるという。

 海洋は、温室効果ガスの排出で生成される余剰熱の90%以上を吸収する。そのため、海水温の上昇が数年でどの程度進んだかを定量化することにより、科学者らは地球温暖化の進行速度を正確に読み取ることが可能になる。

 世界中の専門家で構成された研究チームは今回、水深2000メートルまでの海水温の過去数十年にわたる上昇傾向を明確に把握するため、中国科学院大気物理研究所(IAP)が蓄積したデータを詳細に調査した。

 その結果、2019年の海洋の水温が観測史上群を抜いて最も高かったことが明らかになった。この海洋温暖化の影響はすでに異常気象の増加、海水面の上昇、海洋生物への被害などの形で表れていると、研究チームは指摘する。

 学術誌「Advances in Atmospheric Sciences」に掲載された研究論文によると、2019年の海水温は過去(1981年~2010年)の平均値を0.075度上回ったという。

 これは、世界の海洋が最近数十年間で吸収したエネルギー量が228ゼタジュール(10の21乗ジュール)に上ることを意味する。

「ゼロのなんと多いことか」と論文の筆頭執筆者でIAPの気候環境科学国際センター(International Centre for Climate and Environmental Sciences)に所属するチェン・リジン(Cheng Lijing)准教授は述べ、「過去25年間で世界の海洋に吸収された熱量は、広島型原爆36億個分に相当する」と説明した。

 論文の執筆者らによると、豪州南東部で数か月間猛威を振るっている森林火災などの気候関連の災害と海洋温暖化の間には明確な関連性が存在するという。

 執筆者の一人、米ペンシルベニア州立大学(Pennsylvania State University)のマイケル・マン(Michael Mann)氏は「海水温の上昇は蒸発量の増加を意味する」と説明する。

 マン氏によると、その結果として降雨量が増加し、大気における蒸発の需要も増えるという。

「これは次に大陸の乾燥を引き起こす。大陸の乾燥は、南米アマゾン(Amazon)から米カリフォルニア州や豪州、北極圏までに及ぶ地域で最近発生している森林火災の背景にある主要な要因の一つだ」 (c)AFP/Patrick GALEY