【1月14日 AFP】米アラスカ州スシトナ渓谷(Susitna Valley)で、住んでいた山小屋が火災に見舞われ、雪に覆われた自然の中で3週間以上過ごした若い男性が、救出されるまでいかにして生き延びたかを警察に語った。

 タイソン・スティール(Tyson Steele)さん(30)は今月9日、救助ヘリに救出された。スティールさんは、最も近い隣人から30キロ離れた場所に一人で住んでいたが、先月中旬、急いで火を付けようとストーブの中に段ボールを入れたことで火災が発生。山小屋は全焼し、チョコレート色のラブラドルレトリバー、愛犬フィル(Phil、6)が火災で死んだと明かした。

 スティールさんは当初、フィルが無事に逃げたと思っていたという。州警察に対しスティールさんは、「私の犬が(山小屋の)中で遠ぼえを始めた。フィルは中にいないと思っていた。私はヒステリックになった」と述べ、「何て悲しみを表現したらよいか分からない。ただ悲鳴を上げた。それでしか表せなかった」と語った。

 当時の外の気温は氷点下26度。スティールさんは雪を掘って仮ごしらえの避難所をつくった。わずかな寝袋とコートで暖を取り、火災から持ち出せた缶詰の食べ物を食べた。

 携帯電話は故障し、火災でスノーブーツが失われた。スティールさんは友人や家族との連絡が途絶えたことで捜索が始まるのではないかと期待し、生き延びるための計画を立てた。

 スティールさんは、深く積もった雪の上に火災で出た灰で大きな「SOS」の文字を書いた。スティールさんが家族と3週間連絡を絶ったことで捜索を始めていた警察は、SOSの文字によってスティールさんを発見。アラスカ州警察が公開したヘリコプターからの映像には、スティールさんが助けを求めて手を振る姿が映し出されていた。

 スティールさんは、ベトナム戦争(Vietnam War)の退役軍人が建てた山小屋で、昨年9月から一人で暮らしていた。今後は、治療のために米ユタ州ソルトレークシティー(Salt Lake City)で両親と暮らすという。

「両親は犬を飼っている」「ちょっとした治療になるだろう」。痩せ衰えて心に傷を負ったスティールさんは、そう語った。

 映像は救出時のスティールさん、アラスカ州警察提供。(c)AFP