【1月12日 AFP】11日の台湾総統選で与党・民主進歩党(DPP)の蔡英文(Tsai Ing-wen)総統が圧勝したことを受けて、中国国営新華社(Xinhua通信は12日、蔡氏が不正行為などの「汚い小細工」を用いたと批判した。

 共産党の一党独裁を強める中国に対して、自らを台湾の自由主義的な価値観の擁護者としてアピールしてきた蔡氏は、過去最多得票で再選を果たした。中国は台湾の孤立化を図ったが、強い反発を招く形になった。

 新華社は英語版の論説で、「これはどう見ても正常な選挙ではない」と述べ、蔡氏と民進党が「不正行為や抑圧、脅迫などの汚い小細工を用いて得票し、身勝手で強欲、邪悪な本性を完全に露呈した」と付け加えた。11日には中国語版の論説でも、蔡氏が票の買収を行ったと非難し、圧勝には「外部の闇の勢力」が一役買っていると主張した。

 台湾統一に向けて武力行使も辞さないと公言している中国政府は、台湾を中国の一部とする「一つの中国」の原則を受け入れない蔡氏を嫌悪している。

 中国は過去4年間、経済・軍事・外交面で台湾への圧力を強め、有権者の不安をあおることで、蔡氏と反対の立場を取る野党の支持を高めようと図ってきた。しかしこうした強硬策が裏目に出て、蔡氏の民進党は支持を拡大した。

 反政府抗議デモが何か月も続き、一部が過激化している香港情勢も追い風になった。中国は台湾との統一にあたって香港と同じ「一国二制度」を適用する可能性を示唆しており、台湾の有権者の間で警戒感が高まっている。

 共産党機関紙系の環球時報(Global Times)は昨年末、蔡氏と民進党が「いわゆる中国本土からの脅威をいたずらにあおり」、対立候補で対中融和派の最大野党・国民党(KMT)の韓国瑜(Han Kuo-yu)氏の本土とのつながりを「中傷した」と報じていた。

 また、中国国営メディアは台湾総統選の結果について、台湾と中国本土の長期的なつながりにおける「例外」と一蹴。新華社は蔡氏の勝利を「まぐれ」と評した。

 環球時報は論説で、「中国本土が徐々に力を増す一方、台湾島が徐々に力を弱めているのは避けられない現実だ」「この現実を認めてそれに従うことが、台湾の平和的発展にふさわしい唯一の選択肢だ」と述べた。(c)AFP