【1月10日 AFP】スロベニアで9日早朝、昨年建造されたドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の巨大な木像が9日、何者かに火を付けられて焼失した。地元当局が明らかにした。

 消防隊が駆け付け消火活動に当たったが、像は完全に焼失した。

 像は高さ8メートルで、トランプ氏のトレードマークの髪、青いスーツに白シャツ、赤いネクタイを着用。右手を突き上げ、ニューヨークの自由の女神像(Statue of Liberty)を思わせるポーズをとっていた。像を建造した建築家、トマス・シュレグル(Tomaz Schlegl)氏はAFPに対し、この作品にはポピュリズム(大衆迎合主義)の政治に一石を投じるという願いを込めたと語っていた。

 シュレグル氏は、トランプ氏がイラン司令官の殺害を命じてから緊張が高まっていたことを考慮すれば、トランプ氏に対する抗議行動だと思うと語った。

 像は昨年8月、首都リュブリャナの北約30キロに位置するのどかなセラプリカムニク(Sela pri Kamniku)村に設置された。しかし、像目当ての観光客が増加に悩まされた村人たちの抗議を受けて、昨年12月に近隣の町モラフチェ(Moravce)に移設された。

 モラフチェへの移設後まもなく、像の顔に明らかにナチス・ドイツ(Nazi)の指導者アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)のものを模したと思われる口ひげを描かれる被害に遭った。

 モラフチェのミラン・バラジッチ(Milan Balazic)町長はAFPに対し、「これは芸術と寛容、そして欧州の基本的価値観に対する攻撃だ」と述べ、像の移設以降、大勢の見物客がモラフチェを訪れていたと付け加えた。

 バラジッチ氏は、小さな町モラフチェをPRする絶好の機会と判断し、像の移設費用1500ユーロ(約18万円)を支払った。

 バラジッチ氏は、新たな像を設置し、このような状況だからこそ「寛容の像」と名付ける計画を立てている。木材よりも丈夫な素材を使用する予定だが、トランプ氏を模したものにはしない方針だという。(c)AFP