【1月13日 AFP】ベネズエラ北西部にある広大なマラカイボ湖(Lake Maracaibo)は、製油所のような臭いがする。経済破綻で油井とパイプラインが捨て置かれ、自国が埋蔵する原油に汚染されているのだ。

 マラカイボ湖は、面積1万3200平方キロで、カリブ海(Caribbean Sea)に続いている。だが、その広大な湖面は「とどまることなく押し寄せる黒い液体」で覆われている。

 マラカイボ湖は現在、湖の動植物だけでなく、湖に生息する野生動物に依存する人々の暮らしにとっても危険な状態となっている。

 漁師のヒヨバニー・ビジャレアル(Giovanny Villarreal)さんは、日々取れる水産物の多くは無駄になっていると言う。

「取れた量の半分は原油の臭いがする。誰も買わないから湖に戻している」と、ビジャレアルさんはカニの入った容器を見せて語った。

 湖の東岸のカビマス(Cabimas)にあるビジャレアルさんの家は、洪水による被害を避けるため、支柱の上に建てられている。だが、一家にとって、問題は他にもある。

「時々、ガスの臭いで眠れないことがある」とビジャレアルさんは言う。「ガスは私たちの肺、ことに子どもの体内に入る」

 ベネズエラの1日の石油生産量は、10年前には320万バレルだったが、現在は100万バレルにも満たない。

 ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)は、数千キロにおよぶ水中ケーブルとパイプラインを維持する資金力がない。経済学者で石油業界に詳しいオルランド・オチョア(Orlando Ochoa)氏は「インフラが劣化し、汚染が深刻化している」と指摘した。

 同国の科学研究所の生物学者ユラシ・ブリセノ(Yurasi Briceno)氏は、マラカイボ湖北部の動物相を研究している。ブリセノ氏は「八つの油井のうち、三つは昨年10月から絶えず原油を垂れ流している」「私たち人間は食物連鎖の終わりにいる。湖の中のカニやエビを食べることで、私たちも毒されている」と説明した。

 映像は2019年6月、9月撮影。(c)AFP/Guillaume DECAMME