【1月9日 AFP】人の免疫系が遺伝病のために正常に機能しない場合、骨髄移植が強力な治療手段となり得るが、これには大きな弱点もある──骨髄移植を受けた患者のウイルスに対する防御力が、数か月にわたり大幅に弱まるのだ。そのため、最も軽いレベルの感染症でも病院の受診を強いられる恐れがある。

 この免疫系が弱まる期間に用いられる治療法が「T細胞療法」だ。いまだ実験段階にある手法だが、患者自身の防御力が再構築されるまでの助けとすることを目的としている。

 20年に及ぶ臨床試験を経て、この技術はより多くの患者に用いられるようになった。その多くは子どもで、ヨハン君という名の男児もその一人だ。

 米首都ワシントン郊外の裕福な地域に住むヨハン君の家族にとって、最初の大きな驚きは妊娠検査の結果だった。ヨハン君は計画外の子どもだったのだ。

■リスクを伴う治療

 ヨハン君の母親のマレン・チャモロ(Maren Chamorro)さん(39)は幼少のころから、自身に遺伝性疾患「慢性肉芽腫症(CGD)」の原因遺伝子があることを知っていた。これは、子どもが10歳になるまでの死亡リスクとなり得るという。

 マレンさんの兄弟はCGDが原因で7歳の時に死亡した。遺伝の法則によれば、マレンさんの子どもには4分の1の確率でCGDが引き継がれることになる。

 マレンさんと夫のリカルドさんは、最初の子どもをもうけるために体外受精(IVF)を選択した。受精卵に対して着床前に遺伝子検査を実施できるからだ。

 こうして7年半前に生まれた双子のトーマス君とジョアンナさんには、どちらも病気はみられなかった。

 だがヨハン君は、誕生後の遺伝子検査でCGDの保因者であることがすぐに確認された。

 米ワシントン州にある国立小児病院(Children's National Hospital)の専門家らに相談した結果、ヨハン君の両親は人生で最も重要な決断の一つを下した。ヨハン君に骨髄移植を受けさせることにしたのだ。リスクを伴う治療だが、治癒のチャンスを与えられると考えられた。

 骨髄は、赤血球や白血球などの血液細胞を産生する体内の「工場」として機能する。