中国で催されたワールド・プレミアの翌日、東京・青山でアストン・マーティンDBXのジャパン・プレミアが開催された。先行するスポーツカー・ブランドのポルシェやランボルギーニのSUVや同じ英国のベントレーやロールス・ロイスが投入したSUVたちとは出発地点から異なるというアストン・マーティンならではのSUVとはいったいどんなものなのだろうか?

長い間カモフラージュをまとった写真を見続けてきたから、シルエットは頭に入っていた。前日に公開された公式フォトで、ディテールも理解していたはずだった。けれどアンヴェールの瞬間、真正面から対峙したDBXのインパクトはすごかった。暗がりで紫のライトを浴びているせいでも、全長約5m、全幅もほぼ2mあり、全高に至っては1.68mもある巨体のせいでもない。エレガントなその姿に衝撃を受けたのだ。

DBXは新世代のミドシップ・スポーツであるヴァルキリーやヴァンキッシュや、エントリー・モデルのヴァンティッジのように、凸型グリルの下部がスポイラーと一体ではなく独立している。それでいてノーズは長く、ルーフ・ラインは後ろに向かって引き下げられ、リア・フェンダーは張り出し、テールに向かってぐっと絞り込まれている。創業100年を機に計画されたセカンド・センチュリー・プランで登場した新作たちの中で、DBXはもっともアストン・マーティンらしいスタイリングだといっても過言ではないと思う。

アストンらしさを貫く

発表時点ではまだ16台しかないというDBXとともに来日し、登壇した英アストン・マーティンのヴァイス・プレジデント&チーフ・クオリティ・オフィサー、リチャード・ハンバート氏

来日した英国本社のリチャード・ハンバート氏によれば、目指したのは世界一美しいSUV。ただしDBXのすごさは、その見た目だけではない。まず競合のSUVたちと何より違うのは、DBXのプラットフォームが他車の流用ではなく、完全に新規に造られていること。製法こそアルミの押し出し材を接着して作る既存のものだが、生産は本拠地ゲイドンではなく、ウェールズのセント・アサンにある新工場で行われる。ここで年間5000台、ゲイドンのスポーツカーと合わせて年間1万2000台のアストン・マーティンが今後生まれるのだ。

巨大かつ開口部の大きいボディにも関わらず、ねじり剛性はDB11と同程度。パワーユニットもDB11やヴァンティッジで先行したメルセデスAMGから供給を受ける4ℓV8を搭載し、ZF製の9段ATを介して4輪を駆動する。最高出力は550㎰、最大トルクは71.4kgmを発揮し、0-100㎞/h加速は4.5秒。最高速は291㎞/hに達する。さらに、開発の最後の最後に、アストン・マーティンとしてふさわしい走りを実現するべく、後輪の電子制御式LSDを追加したという。

インテリアもアストン・マーティンの伝統に則った美しく洗練された仕立てだが、流麗な外観からは想像できないほど快適な居住スペースを確保している。後席頭上の空間はレンジローバーより広いというから驚きだ。さらにドアがサイドシルを覆い乗降時に服の裾を汚さないようになっていたり、後席が40:20:40の分割可倒式だったり、626ℓもの荷室を備えるなど、高い実用性も備えている。ペット用の散歩後に足が洗えるポータブル・ウォッシャーや、スキー用のブーツ・ウォーマーといった多彩なオプションを用意し、様々なニーズに対応する。

DBXのデリバリーは2020年の第二四半期よりスタート。価格は2299万5000円〜(10%消費税込)。

文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=アストン・マーティン・アジア・パシフィック