【1月7日 AFP】タイの首都バンコクで6日、がんや不眠症、筋肉痛などで助けを求める人々に無料で大麻オイルを配布する医療クリニックが開業した。タイでは伝統医学で長年大麻が使用されており、2018年には東南アジアで初めて医療用マリフアナが合法化されている。

 タイ政府はマリフアナがもたらす経済効果や健康効果を強く訴えている。数十億ドルの経済効果が見込める大麻栽培に意欲的なほか、大麻オイルの抽出・精製技術や市場開拓への投資を進めている。

 アヌティン・チャーンウィラクーン(Anutin Charnvirakul)保健相はクリニックの開業式で、「今日は始まりの日だ」と述べた。白衣を着た大麻の葉を模したマスコットの隣に立った保健相は、AFPの取材に対し「われわれはタイ国民により健康になってもらうため、またより良い経済のために闘っている」と語った。

 クリニックでは高齢者を中心に、多くの患者が5~10ミリグラムサイズの小びんに入った筋肉痛用オイルを受け取るため待機する姿が見られ、中には重篤な症状の人もいた。

 ただ、大麻を栽培しオイルを抽出できるのは資格のある一部の人のみ。合法化によって小規模農家の好機が制限され、巨大な農工業企業が得をするのではないかという批判もある。

 医学的研究により、大麻オイルは多発性硬化症やてんかんなどに起因する痛みを軽減することが分かっている。だが、各種がんを含むその他の重篤な病気への効果は科学的に証明されていない。

 タイでは嗜好(しこう)品としての大麻の使用や売買は依然違法で、マリフアナたばこの所持は最大で10年の実刑が適用される重罪とされている。(c)AFP