【2月19日 AFP】ナイジェリアの最大都市ラゴス(Lagos)にある水上のスラム街、マココ(Makoko)。混雑した運河を丸木舟で通り抜けながら、ジョン・エロモセレ(John Eromosele)氏はスマートフォンで現在地の座標を記録した。

 他のボートは、高床式の木造の家々の間を押し合いへし合いしながら水路を進んでいく。「目抜き通りのようだ。ここはいつも渋滞している」。コンピューター・コーディングの専門家であるエロモセレ氏はそう言って笑った。

 マココという街は公式には存在していない。

 人口は推計30万人とされているが、誰も正確な数は知らない。その住民らが暮らす今にも倒壊しそうな家々は、この街のいかなる開発計画にも地図にも登場しない。

 南アフリカに拠点を置くNGO「コード・フォー・アフリカ(Code for Africa)」は、こうした現状を変えるための活動を行っている。

 目標は、マココを文字通り地図に載せることによって、住民らが待ち望んでいる行政サービスを導入させることだ。

 マココの5人の首長の一人、アルバート・ジェジェ(Albert Jeje)氏は「ほとんどの道には名前がないし、家に住所も付いていない。時には50世帯が同じ番号を使っていることもある」と話した。

 マココを「アフリカのベネチア(Venice)」と呼ぶ人もいるが、ロマンチックな都市との類似点はあまりない。

 どす黒い水にはごみが漂い、訪れた人々はディーゼル発電機や魚の薫製から出る煙にむせ返るほどだ。

 行政の管轄外であるため、巨大な迷路のように入り組んだ水路沿いには電気も上水道も通っておらず、学校もなければ病院も警察もない。