■中東への関与は「米史上最悪の決定」のはずだが……

 トランプ氏は昨年10月にも、シリアの紛争地帯でクルド人部隊を支援していた米軍に突然撤退を命じ、同盟国を驚かせたばかりだ。この命令によって、ほぼ一夜にして同地域の形勢が変わり、ロシア、トルコ、イラン、そしてシリア政府軍が優勢となった。

 このときトランプ氏は「わが国にとってばかげた、終わりのない戦争は終わろうとしている」と述べ、与党・共和党からの批判さえ一蹴した。そして、トレードマークとも言える全文大文字のツイートで「中東に立ち入ろうとするのは、わが国の歴史の中で下された最悪の決定だ!」とつづった。

 その1か月前にもトランプ氏は、イランの政権転覆を主張していた強硬派のジョン・ボルトン(John Bolton)大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を解任し、同様のメッセージを発していた。

 トランプ氏はまだ政界進出を果たしていなかった2011年11月、当時のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領を非難して、「バラク・オバマは選挙で勝つために、イランと戦争を始めるだろう」とツイートしたこともある。実際にはオバマ氏はイランとの戦争へは向かわず、翌12年の大統領選で再選された。

 今回殺害されたイランのソレイマニ司令官について、中東における米国の国益に対する破壊攻撃の背後にいる最重要人物だという認識は長年、米民主党・共和党で共通している。

 だが今回、共和党はソレイマニ司令官殺害を公に是認している一方、民主党はトランプ氏が自ら長らく反対してきた戦争挑発の道に突き進んでいると指摘する。

 民主党左派の大統領候補バーニー・サンダース(Bernie Sanders)上院議員は、「トランプ氏は終わりなき戦争を終わらせると約束したが、今回の行動はわれわれを新たな戦争に向かわせている」と批判した。(c)AFP/Sebastian Smith