■父親はいらない

 シャオグンシュさんは、父親は必要ないと考えている。自身の父親は支配的で怒りやすかったことが、シャオグンシュさんの家族観に影を落としたという。

 アナリストらは、中国における不妊治療市場の規模は22年には15億ドル(約1630億円)に達すると予測しているが、これは16年の倍以上に当たる。また、中国国外における中国人向け生殖医療サービスの需要も拡大している。

 デンマークの精子・卵子バンク「クリオス・インターナショナル(Cryos International)」は中国語のウェブサイトを開設しており、中国語を話すスタッフもそろえている。また、複数の欧米の精子バンクはAFPに、中国人の顧客が増えていると語った。

 だが、海外の精子バンクの利用は安価でも簡単でもない。

 中国の保健当局は、精子バンクの目的は「不妊治療と遺伝性疾患の予防」であると規定している。このため実質上、未婚女性の利用は禁じられている。

 海外の精子バンクを利用して妊娠するには、最低20万元(約300万円)かかる。

 また、中国は法律で人の精子の輸入を禁止しており、女性は治療のため何度も海外へ行かなければならない。さらに国内では、今でも子どもを持つには結婚が不可欠だと考えられており、女性たちは差別にも直面する。

■「白人」との混血ベビー

 中国では精子ドナーは匿名とされている。だが、国外の精子バンクではドナーの髪の色、民族的背景など詳細が提供され、子どもの頃の写真も確認できる。

 中国南西部に住むシングルマザーのキャリーさん(35)も、匿名を条件にAFPの取材に応じた。キャリーさんは国際的な精子バンクは「顧客の需要を満たすことができる」と話す。

 クリオスの最高経営責任者(CEO)ピーター・リースレブ(Peter Reeslev)氏はAFPの取材に、選択肢が与えられたら「中国人女性は白人ドナーを選ぶ傾向にある」と指摘し、理由として中国国外の精子バンクでは中国人ドナーの数が少ないことを挙げた。クリオスでは、ドナー900人のうち中国人とされているのは9人にすぎない。

 だが、専門家らは中国人または中国系米国人ドナーの人数にかかわらず、中国人女性は白人のドナーを選ぶと指摘する。中国では、二重まぶたや白い肌が高く評価されるからだ。

 キャリーさんはドナーカタログを見ながら、自分は外国人の身体的特徴を好むことに気付いたと語った。今ではデンマーク人のドナーが父親の子どもが2人いる。

 一方、シャオグンシュさんはオスカルについて「個人的には肌の色は気にしない」と話す。「気にしたのは、目が大きいことと顔立ちがいいかということだ」 (c)AFP/Sijia Li and Helen