【1月1日 AFP】イラクの首都バグダッドで12月31日、米国による親イラン派勢力空爆に抗議する人々が米大使館を襲撃する事件が発生した。デモ隊は外壁を突破し、「米国に死を!」と叫び声を上げた。

 米大使館は警備の厳重な「グリーンゾーン(Green Zone)」にあり、何重もの検問に守られているため、抗議行動の参加者が到達する事態は長年起こっていなかった。

 戦闘服を着た男性や少数の女性からなるデモ隊は各所の検問を通過し、大使館の壁に到達。イラク治安部隊は目立った対応を見せなかった。

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領はツイッター(Twitter)への投稿で、襲撃はイランが「画策した」と非難し、同国は「全面的な責任を負うことになる」と警告。一方で、米大使館を守るためイラクが「武力を行使する」ことを期待していると表明した。

 米国防総省の発表によると、大使館職員らは無事で、同館からの退避は計画されていない。マーク・エスパー(Mark Esper)米国防長官は事件を受け、大使館保安のためバグダッドに追加の治安要員を派遣する意向を表明した。

 デモ隊は、主にイスラム教シーア派(Shiite)の武装組織からなる連合体「人民動員隊(Hashed al-Shaabi)」の旗を振り、同組織への支持を表明した。人民動員隊は、隣国イランから訓練や武器の提供を受けている。

 デモ隊は、大使館の敷地を出るようにとの呼び掛けを無視し、石を投げたり、監視カメラを壁からもぎ取ったりした。一方、米海兵隊はデモ隊を退散させるため、まず一斉に銃弾を発射した後に催涙ガスと閃光(せんこう)弾を使用。人民動員隊によれば、少なくとも62人が負傷した。

 米国は12月29日、人民動員隊参加の強硬派組織「神の党旅団(カタイブ・ヒズボラ、Hezbollah Brigades)」を空爆し、戦闘員少なくとも25人を殺害。今回のデモはこれに抗議するため行われた。

 イラクでは米軍が駐留する地域での襲撃が相次いでおり、先週には軍事基地に対するロケット弾36発による攻撃があり、米国人の請負業者1人が死亡。29日の空爆はこの攻撃への報復だった。(c)AFP