【12月30日 AFP】ウクライナ政府軍と同国東部で紛争中の親ロシア派武装勢力は29日、計約200人の捕虜交換を行った。親ロ派武装勢力の戦闘員らと引き換えに、ウクライナおよび親ロ派支配地域で数年にわたり拘束されていた民間人やウクライナ軍兵士が交換の対象となった。

 ウクライナ側は軍関係者12人と民間人64人を含む76人の引き渡しを受けた。ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領(41)は首都キエフ近郊のボリスピリ(Boryspil)空港で解放された捕虜らと面会した後、報道陣に対し「素晴らしい。非常にうれしい」と心境を語った。

 元捕虜を乗せた飛行機が到着すると、花や風船を持った親族らが出迎えた。家族らは喜びのあまり泣き叫びながら、元捕虜たちのもとへ駆け寄った。

 交換対象となった捕虜の中には、米政府が出資するラジオ局「ラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティー(RFE/RL)」のウクライナ支部で活動していた記者、スタニスラフ・アセーエフ(Stanislav Aseyev)氏とオレグ・ガラジュク(Oleg Galazyuk)氏も含まれていた。

 ウクライナ政府はまた捕虜交換の一環として、2014年の親欧州連合(EU)派による蜂起の際、デモ隊に発砲し複数の参加者を殺害した疑いのある5人の機動隊員らを親ロシア派に引き渡した。これについては国民から声が上がっている。

 一方、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相、フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領はこぞって、捕虜たちの交換を「前向きだ」として称賛した。

 プーチン氏とゼレンスキー氏は今月9日、仏パリで初となる対面での首脳会談を行い、欧州で唯一継続中の紛争の危機緩和を目指す措置を進めることで合意した。捕虜交換はこの合意を受けて行われた。

 今年5月に就任したコメディアン出身のゼレンスキー氏は、停戦に向けた和平プロセスを始動させようと模索してきた。

 パリの会談で両首脳は、2015年にベラルーシの首都ミンスクで行われたロシア・ウクライナ首脳会談で両国が署名した停戦合意を復活させようとしていた。この合意には重火器の撤収や、境界地域の管理権をウクライナ側に戻すことなどが盛り込まれていた。

 しかし、多くの人々はプーチン氏が心から停戦を望んでいるのかどうか疑念を抱いており、ゼレンスキー氏の和平計画に対しても、退役軍人や国家主義者らからは強い批判が寄せられている。(c)AFP/Olga SHYLENKO / Dmytro GORSHKOV and Andriy PERUN