【1月29日 AFP】弱冠18歳のイラク少数派ヤジディー(Yazidi)教徒のイマン・アッバス(Iman Abbas)さんは、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に何度も「奴隷」として売られながらも逃げ出し、今は生き延びた仲間たちの声を世界に届けようとしている。

 アッバスさんは、家族と暮らすイラク北部のクルド人自治区シャリア(Sharia)避難民キャンプの質素な2部屋のテントで、「これまで経験してきたことを考えると、私はもう自分がティーンエージャーだとは思えない」と静かな声で語った。

 アッバスさんは今、自分を救ってくれたヤジディー救済事務所(Yazidi Rescue Office、YRO)で働いている。昨年は同事務所の代表としてインド・ムンバイで、マザー・テレサ・メモリアル賞(Mother Teresa Memorial Award)を受賞した。

 YROはISが2014年、イラク北西部でヤジディー教徒が先祖代々住む地域を襲撃した際に捕らえたヤジディーの少女約5000人の救済にあたっている。

 ISが岩だらけの村シンジャール(Sinjar)を襲ったのは、アッバスさんが13歳の時だった。ヤジディー教徒の女性と少女数千人は「性奴隷」に、少年は子ども兵士にされ、成人男性は殺された。

 アッバスさんは家族から引き離され、他のヤジディー教徒の女性らと一緒に「奴隷市場」でISのメンバーに売られた。

 アッバスさんは3度売られ、最後にISの40歳のイラク人医師に買われた。この医師は、コーラン(イスラム教の聖典)の101ページ分を暗唱すれば自由にしてやるとアッバスさんに約束した。

 ヤジディー教徒はクルド語を話し、民族宗教を信仰する少数派だ。このため別の宗教の教典をアラビア語で暗唱することは、おびえたティーンエージャーにとっては、とてつもない挑戦となった。

「毎日、目の前に座ってコーランを暗唱するように言われた。1か月と4日で101ページを暗記できた」とアッバスさんは語った。