【1月3日 CNS】中国・広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)の桂林(Guilin)料理の大師といわれる余富(Yu Fu)さんは、生魚料理を20年以上作ってきた。「横県(Heng)の生魚料理の一人者」と呼ばれる余さんの影響の下で、家庭料理から市場へと歩み出し、地元の名物となった。

 横県の生魚料理は俗称「両片(Liangpian)」と呼ばれ、横県に500年以上伝わる伝統料理だ。もともとは地元を流れる川「郁江(Yujiang)」に暮らす漁民が、舟の上で火を使うのが不便なため、やむなく生で魚を食べていたという習慣だったが、今や横県の第一の美食となった。2018年9月には、広西十大伝統料理の一つに評された。

 余さんによると、横県の生魚料理は包丁のさばき方、盛り付け、材料の選定に工夫を凝らすという。生きた魚をつかむと、たたいて失神させて骨と皮を除く。つまようじの半分ほどの薄さに包丁を入れて端を残し、もう一度包丁を入れる。この2枚を広げると胡蝶(こちょう)のような形となる。刺し身ができるまで5分足らずだ。

 薬味の種類は豊富で、これもおいしさの秘密だ。長年の試行錯誤の結果、横県の人々は魚腥草(ドクダミの一種)、シソ、ニラネギなど二十数種類の香辛料を髪の毛ほどの細さに切り、ピーナツ油、しょうゆ、こしょうを入れ、刺し身と一緒に食べる。魚臭さを取り去って新鮮味を増し、殺菌と解毒作用があるという。

 余さんの名人技は包丁さばきだけではない。刺し身を一枚一枚きれいに並べ「年年歳歳富が増し、鴛鴦(えんおう、オシドリのこと)が共に遊び、竜と鳳(オオトリ)が飛び交う」のあでやかな盛り付けで、味覚と視覚の両方から楽しませてくれる。

 横県の生魚料理は地元政府から無形文化遺産に指定され、余さんも継承者の指名を受けている。(c)CNS/JCM/AFPBB News