【2月16日 AFP】満員列車に乗り、穴だらけで歩道のない混雑した道路の端を歩く──視覚障害者のビノド・クマール・シャルマ(Vinod Kumar Sharma)さん(44)は白いつえを突きながら、1日4時間かけてインドの首都ニューデリーの職業訓練校に通っている。

 デリー首都圏は、2000万人以上が密集する大都市。多くの道路には歩道がない。そのため、シャルマさんはわずか数センチ脇を車やトラックが通る道路の端を、白いつえで前方を探りながら歩く。駅では通勤客の手を借りながらプラットホームを歩き、列車に乗り降りする。列車は超満員だ。

「人々は優しい。でも、道路はひび割れていたり下水道の穴が開いていたり、危険だらけだ」とシャルマさんは話す。

 3人の子の父親でもあるシャルマさんは、障害者の教育と雇用の機会の深刻な不足と闘っている。インドの多くの視覚障害者が同じ状況だ。多くは暮らしていくために施しを乞うか、慈善団体に頼らざるを得ない。

 世界保健機関(WHO)によると、インドの視覚障害者は推定6300万人にのぼる。専門家によると、農村部の貧困と医療へのアクセスの悪さが、同国で視覚障害の有病率が高い原因の一つとなっている。

 シャルマさんは、同国で最も貧しい州の一つのビハール(Bihar)州出身。村の畑で働いていた10代の頃、視力を失った。治療のためニューデリーに移ったが、医師らは治すことができなかった。

 シャルマさんはニューデリーにとどまり、視覚障害者のための職業訓練校に通い、工場に就職した。工場が閉鎖される2018年まで20年以上にわたり勤務し、点字のおもちゃを作った。

 シャルマさんは2019年1月、マッサージ療法士としての職業訓練を受講し始めた。「マッサージを選んだのは、年を取って他にあまり選択肢がなかったからだ」と話した。(c)AFP