【12月24日 AFP】ドイツ西部ボンで21日、路面電車の運転士(47)が乗務中に意識不明となり、電車が暴走する事態に陥った。しかし乗客らが車両を停止させることに成功し、惨事を免れたという。

 同日夜に市内を運行していたこの路面電車は、スピードを出したまま一度も停止することなく8駅を通過。

 乗客の男性2人が乗務員室のドアを壊して中に入ったところ、運転士は運転席に座っていたものの、呼び掛けに応じなかった。女性客1人が地元交通会社SWBに電話で通報し、同社からの指示をこの男性客2人に伝え続けて、2人は電車を停止させることに成功した。

 ボン市長は地元紙ゲネラルアンツァイガー(General-Anzeiger)に対し、「彼らは危険な状況で実に正しい行動を取り、人々の命が救われた可能性もある」とコメントした。

 運転士は病院に搬送されたが、その後退院し、現在療養休暇を取っている。運転士の健康状態について、これ以上の詳細は公表されていない。

 暴走したこの路面電車は、乗客が非常ブレーキを何度引いても止まらなかった。SWBは、非常ブレーキは運転士に非常事態を知らせるだけで、実際に停車するかどうかは運転士の判断に委ねられると説明している。

 乗務員室には、レバーが作動しなくなった際にエンジンを切るよう設定されている、いわゆる「デッドマン装置(運転士異常時列車停止装置)」があるが、運転士の体の重みでレバーが押され続けていたため、機能しなかったとみられている。

 SWBのイェルン・ツァウナー(Joern Zauner)氏はゲネラルアンツァイガー紙に対し、乗客らが複数のドアの非常開錠システムを作動させていたことから、路面電車はいずれ速度を落とし、最終的には停止していただろうという見方を示した。

 同紙は、妻と共にこの電車に乗っていたという男性(61)が「命の危険を感じた。私たちにできることは何もなかった」と語ったと報じている。

 電車の運行速度は不明だが、ツァウナー氏は時速40~70キロだったのではないかと推定している。(c)AFP