【12月23日 AFP】(更新)サウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ(Jamal Khashoggi)氏の殺害事件をめぐり、サウジの検察当局は23日、5人に死刑判決が言い渡されたと発表した。ただ、事件は計画的でなかったとの結論が出され、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)の元側近2人は無罪または不起訴となった。

 サウジ政府に批判的だったカショギ氏は昨年10月、トルコ・イスタンブールのサウジ総領事館で殺害された。トルコ当局によると、カショギ氏は館内で絞殺され、遺体はバラバラに切断された。犯行にはサウジ関係者15人が関わったとされる。同氏の遺体は現在も見つかっていない。

 米中央情報局(CIA)と国連(UN)の特別報告者はいずれも、ムハンマド皇太子が事件に直接関与していたと結論付けているが、サウジ政府は皇太子の関与を断固否定している。

 今回の判決は、サウジの首都リヤドでの来年の20か国・地域(G20)首脳会議(サミット)主催を控える中、国際社会でのイメージ回復を狙い、事件に幕を引こうとする同国の取り組みを浮き彫りにした。

 検察によると、事件で起訴されたうち、5人に死刑判決、3人に計24年の禁錮刑が言い渡され、これ以外の人々は無罪となった。大半は氏名が公表されていない。

 検察は先に、カショギ氏殺害はアフメド・アシリ(Ahmed al-Assiri)情報機関副長官の監督下で行われたとの見解を表明。米財務省は、サウジ王室のメディア顧問だったサウード・カハタニ(Saud al-Qahtani)氏が事件につながった活動の「計画と実行に関与」していたと主張していた。

 しかし検察によると、カハタニ氏は捜査を受けたものの「証拠不十分」として不起訴となり、アシリ氏も起訴はされたものの最終的に同じ理由で無罪となった。

 かつてムハンマド皇太子の側近だった両氏は、事件を受けて解雇されていた。だが欧米の情報筋によると、審理のため出廷していたのはアシリ氏だけだったという。

 カハタニ氏は王室批判を展開する人々をソーシャルメディア上で激しく攻撃する活動を主導していた。カショギ氏殺害事件以降は公に姿を見せておらず、その行方をめぐり臆測が広がっていた。

 超法規的・即決・恣意(しい)的処刑に関する国連の特別報告者、アニエス・カラマール(Agnes Callamard)氏はツイッター(Twitter)への投稿で、「要はこういうこと。殺し屋たちは有罪となり、死刑が言い渡された。黒幕たちは自由の身になっただけでなく、捜査と裁判の手がほぼ及ばなかった。これは正義とは正反対。あざけりだ」と批判した。

 トルコ外務省は、今回の判決は「期待を大きく下回った」と表明。国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は「正義も真実ももたらさないごまかしだ」と非難した。(c)AFP