【12月23日 AFP】シリア反体制派の最後の主要拠点となっている北西部イドリブ(Idlib)県で、バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権側の部隊が攻勢を強め、避難民が急増している。在英のシリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)によると、ロシア軍の空爆も続き、戦闘を避けて避難しようとしていた民間人9人が死亡した。

 イドリブ県は、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の元傘下組織を前身とする反体制派連合「タハリール・アルシャーム機構(HTS)」が大半を支配している。県内には約300万人が暮らすが、内戦で家を失ってこの地に逃れてきた人々も多い。

 シリア人権監視団のラミ・アブドルラフマン(Rami Abdel Rahman)代表は22日、県南部のマーラトヌマン(Maaret al-Numan)奪還を目指して政府軍が19日から攻勢を強め、これまでに29町村を掌握したと発表した。4日間の戦闘で反体制派110人と政権側77人が死亡し、マーラトヌマン周辺から3万人以上が避難を余儀なくされているという。

 同監視団によると、イドリブ県南部ではこの1週間に民間人40人以上が死亡した。

 5人の子を持つ住民男性はAFPの取材に、救助隊や地元支援団体は住民の避難に苦慮していると語った。「誰もが全力を尽くしているが、(避難が必要な)人が多すぎて手が回っていない」と話すこの男性も、家族と一緒に県北部へ避難したいが車の手配ができなかったという。「どこも安全ではない。家の中にとどまろうが、外に逃げ出そうが、どのみち死ぬしかない」

 シリア北部では8月に停戦が合意されたものの、空爆が続き、これまでに民間人の死者は290人に上っている。国連(UN)は、マーラトヌマン周辺では今月16日から政府軍とロシア軍による空爆が激化していることを明らかにするとともに、戦闘の「即時縮小」を求めている。

 国連安全保障理事会(UN Security Council)は20日、イドリブ県を中心に暮らすシリア人400万人への越境人道支援を1年間延長する決議案を採決したが、ロシアと中国が拒否権を行使し、否決された。反体制派地域では来年1月以降、国連の人道支援がとだえる恐れが出ている。(c)AFP