【12月22日 AFP】ベルギーの王立中央アフリカ博物館(Royal Museum for Central Africa)は21日、学生たちを案内する際、人種差別的な発言をし、残酷な植民地支配をめぐるベルギーの過去を擁護したとして、ガイドの男性に対する調査に乗り出した。

 名前は明かされていないガイドの発言は、ベルギーの支配下のコンゴ民主共和国(旧ザイール)で横行した、地元労働者の手を切断する慣行を過小評価する内容が含まれていたとされる。

 同博物館のグイド・グリシールズ(Guido Gryseels)館長はAFPに対し、こうした発言は受け入れられず、「われわれが表現しようとするものの精神と完全に反している」と批判した。

 アフリカ中部の植民地におけるベルギーの搾取に対して無批判に称賛しているとして、かつて悪評を買っていた同博物館は、展示内容の一新を目指した大規模な改装を経て、昨年再開したばかりだった。

 19世紀後半から20世紀初頭にかけてのベルギーによる植民地支配は、残酷で搾取的だったとして悪名が高い。当時のベルギー国王、レオポルド2世(King Leopold II)の私領地として統治されていた植民地には、現在のルワンダやブルンジ、コンゴ民主共和国などが含まれる。

 ガイドの男性は同博物館のツアーで、アントワープ大学(University of Antwerp)で歴史学を専攻する大学院生らを案内。このツアーに参加していた女子学生はAFPに対し、男性が植民地支配を肯定的にみなす発言を繰り返していたと述べた。

 女子学生によると、男性は白人であるために博物館のガイドの仕事を得るのに苦労したと不平を漏らした後、「黒人は何もかも取り除こうとしている」として改装プロジェクトを非難。さらに、ベルギーの植民者らが、天然ゴムの採取でノルマを果たせなかったコンゴの村人たちに対し、罰として手を切断していた慣行について疑問を呈したという。

 先の学生は、「男性が切断された手について、写真が2枚しかないため、非常に相対的なものだと話したが、事実は違う…手を失った人々の写真の全体的な集積がある」と語った。

 男性はさらに、コンゴを独立に導いた英雄であるパトリス・ルムンバ(Patrice Lumumba)初代首相が1961年に暗殺された事件に関連し、アフリカ人は常にお互いを撃ち合っているとする人種差別的な一般論を繰り広げた。ルムンバ氏の暗殺は、ベルギーの他、米中央情報局(CIA)、英国の情報機関が絡んでいたとされる。この発言を受け、学生たちに同伴していた教授はツアーを中断した。

 この出来事に対して最初に懸念を示し、その内容をツイッター(Twitter)に投稿した先の女子学生は、「動揺し、気分を害した」と述べた一方、男性が職を失うことを望んではいないとしたものの、博物館に対してガイドの人選と教育を改善すべきだと指摘した。

 グリシールズ館長によると、ガイドの男性は一部の発言について事実と認めているが、23日に詳しい調査を受けることになるという。聞き取りの後に同博物館は、男性の処遇を決定する。(c)AFP/Damon WAKE