【12月22日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が20日、ロシア産天然ガスをドイツに運ぶパイプライン建設プロジェクトの参加企業に対する制裁が盛り込まれた国防権限法(NDAA)に署名し、同法は成立した。

 このプロジェクトは、ロシアからバルト海(Baltic Sea)の海底を通じてドイツに天然ガスを運ぶパイプラインを建設する「ノルドストリーム2(Nord Stream 2)」。欧州一の経済大国ドイツへのガス供給倍増が目標だ。だが米議会は、欧州同盟国に対するロシアの影響力を増大させるものだと危機感を募らせている。

 2020会計年度の国防予算の大枠を定めたNDAAの一部に盛り込まれた制裁は、ノルドストリーム2およびロシアとトルコを結ぶパイプライン「トルコストリーム(TurkStrea)」建設の参加企業が対象。制裁の内容は、工事請負業者の資産凍結や米国ビザ(査証)取り消しなど。全容はまだ明らかにされておらず、60日以内に制裁対象企業と個人の名前が公表されるという。

  米議員らはノルドストリーム2について、米国との関係が悪化するロシア政府を裕福にし、各地で緊張が高まる欧州におけるウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の影響力を増大させると警鐘を鳴らしてきた。

 しかし、米国による制裁の動きにドイツとロシア、欧州連合(EU)が直ちに反発。中でもドイツは21日、ウルリケ・デンメア(Ulrike Demmer)首相報道官が「こうした種類の域外制裁は認められない」との声明を発表。「ドイツおよび欧州企業が痛手を受ける。制裁はわが国に対する内政干渉だ」と主張した。

 ノルドストリーム2の総工費110億ドル(約1兆2000億円)は、半分をロシア国営天然ガス企業「ガスプロム(Gazprom)」、残りの半分を欧州企業5社が出資しており、既に海底パイプラインの80%超が完成している。(c)AFP