【12月21日 AFP】ロシア外務省は18日、アルプス山脈(Alps)のフランス領側を拠点にロシアのスパイが活動していたとする仏紙報道を否定した。同省は、報道内容はロシア政府を中傷するための陰謀説だとしている。

 仏夕刊紙ルモンド(Le Monde)は8日、スイス、イタリアと境を接するフランス南東部オートサボア(Haute-Savoie)県にロシアのスパイ15人が一時滞在したと報道。15人について、ロシア軍の諜報(ちょうほう)機関である参謀本部情報総局(GRU)の29155部隊の所属だと伝えた。

 同部隊は、英国に亡命したセルゲイ・スクリパリ(Sergei Skripal)氏が神経剤で襲撃された事件など、複数の作戦を実行したといわれている。

 ルモンドが掲載した15人のリストには、スクリパリ氏襲撃の実行犯とされるGRU局員の偽名「アレクサンドル・ペトロフ(Alexander Petrov)」「ルスラン・バシロフ(Ruslan Boshirov)」も含まれている。

 同紙は、西側諜報機関は15人がフランス滞在中に残した物証を発見していないとする一方、同県で飲食、宿泊、買い物をした場所から滞在の事実が確認されたと伝えている。

 ロシア外務省は18日、「遺憾ながら、証拠が全くないことですら、あからさまにロシア嫌悪的な記事を掲載する障害にならなかったと言わざるを得ない」と表明。「欧州の大衆の頭にはロシアを脅威とする迷信があり、当該記事はそれを支えるための偽情報だと考えている」とした。

 記事が掲載されたのは、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領とウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領がパリで会談する前日だった。ロシア外務省は、このタイミングは「偶然ではない」との見方を示している。(c)AFP