■脳に組み込まれた感情

 論文の主執筆者で、ノースカロライナ大チャペルヒル校のクリステン・リンドキスト(Kristen Lindquist)准教授(心理学・神経科学)は、AFPの取材で「すべての語族が他の語族と同じように感情を認識していることはないようだ。それがこれほど大きなスケールで明らかになったことが実に重要」と語った。

 今回の分析では、言葉の意味の類似がみられる語族同士の地理的な近接についても明らかになった。これは、言葉の意味の差異が貿易、征服、移住などのパターンに関係している可能性があることを示唆している。

 その一方で、世界的に共通する発見もあった。あらゆる言語において感情は、「快」および「不快」な経験、さらにはその感情に伴う興奮レベルの高さに基づいて区別されていることだ。

 興奮度が低い感情の「悲しみ」と、興奮度が高い感情の「怒り」を同等と見なす言語はほとんどなく、また快の感情である「幸せ」と不快な感情である「後悔」を同等と見なす言語もほとんどなかった。

 この分析結果は、哺乳類の脳には特定の主要な感情が組み込まれているとする説を裏付けている。この説によれば、人間は長きにわたり新しい経験による感情を脳に追加し、その後にそれぞれの感情に名前を付けてきたのだという。

 論文の筆頭執筆者で、ノースカロライナ大チャペルヒル校の博士課程学生のジョシュア・ジャクソン(Joshua Jackson)氏は、AFPの取材に「感情の基本的な構成単位が存在するが、人間は何万年にもわたって自身の文化の中でこれらの構成単位と向き合ってきた」と述べ、「この過程で重要なのは、人間がどのようにして感情に名前を付け、そしてどのようにして感情を伝えるかといった部分で、それが現代の人間の感情表現にこれほど大きな多様性がある理由だ」と続けた。(c)AFP/Issam AHMED