■今この瞬間を楽しんでほしい

 バンクロフトさんは、「私たちは完全に自由でいたい。そうすれば、劇を危険でエキサイティングなものにできる」と話し、ヨンダーのようなサービスに守られていれば、劇をそのレベルまで持っていき、観客を驚かせることができると強調した。

「しかし、それは二次的なことだ。劇を見に来ているなら、目、耳、心、すべてをこの瞬間に向けてほしい」

 ヨンダーの創設者で最高経営責任者(CEO)グラハム・ドゥゴニ(Graham Dugoni)氏(33)は、このアイデアを米サンフランシスコで売り込み始めた当初は、反対も多かったと話す。だが、「人々が生活において見いだしている価値を侵食せずに、デジタル時代に移行させる手助けをしたい」という信念を貫き通した。

 ドゥゴニ氏はAFPに、「公的な場であっても、ある程度のプライバシーは確保する必要がある」と語る。「アーティストが安心してパフォーマンスでき、ファンが心を奪われ楽しむということが非常に重要だ」「いろいろなものが楽に手に入るようになり、中身が空洞化しているように心の底で感じている」

 ドゥゴニ氏は現在、スマートフォンは持っておらず、いまだにガラケーを使っている。理由は「感覚的な情報のインプットが多すぎるからだ」。 (c)AFP/Maggy DONALDSON