【12月27日 AFP】米ニューヨークのブロードウェー(Broadway)にショーを見に来たアダム・ウェイス(Adam Weiss)さん(39)は、携帯電話は鍵の掛かるポーチに入れられ、公演中は使えないと聞いてがっかりした。

 リン・マヌエル・ミランダ(Lin-Manuel Miranda)らによる即興コメディー「フリースタイル・ラブ・スプリーム(Freestyle Love Supreme、原題)」では公演中、観客に携帯電話を鍵付きのポーチに入れるよう求めている。

 ウェイスさんは「自分の一部が欠けたみたい」に感じたが、いざ公演が始まるとネットにつながっていないことで感じた不安は消えた。「いったん携帯電話から離れてみたら、まったく気にならなかった」

 米国ではこのように、コンサートや演劇、美術展などで、来場者の携帯電話を容器に入れて使えないようにする動きが広がっている。この際によく使われているのが2014年に設立されたスタートアップ「ヨンダー(Yondr)」のサービスだ。米歌手マドンナ(Madonna)やコメディアンのデイヴ・シャペル(Dave Chappelle)らも利用している。

 ヨンダーのポーチは、スタッフが会場入り口でサイレントモードに設定された携帯電話を入れ、ふたを閉める仕組み。指定の携帯電話利用エリアに設置された専用機器を使えば解錠できる。

 このサービスを利用すれば、出演者や観客が携帯電話に邪魔されることが減り、観客に公演に集中してもらえるだけではなく、舞台装置や内容がインターネット上に流出することを防ぐこともできる。

 フリースタイル・ラブ・スプリームの出演者の一人、俳優のアンドリュー・バンクロフト(Andrew Bancroft)さん(41)は、携帯電話のフラッシュがなくなったことで、観客は舞台に集中できるようになり、ショー自体の質も良くなったと話す。

 即興劇の性質上、劇に観客を巻き込むこともあるが、携帯電話で撮影される恐れがなければ俳優らもよりリアルに演じることができ、観客も入り込むことができると、バンクロフトさんは言う。