【12月19日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は、けんか好きでショー好きだ。そのトランプ氏は18日、首都ワシントンで弾劾訴追案の採決が行われている最中に、数百キロ離れたミシガン州の小都市バトルクリーク(Battle Creek)で選挙集会を開いていた。

 集会は以前から予定されており、歴史的な弾劾訴追と日程が重なったのは偶然だ。だが、弾劾訴追案が可決された瞬間、トランプ氏は最も熱狂的な約7000人の支持者ら──安全靴を履いたり狩猟用の迷彩服を着たりした労働者たちを前に、演説していた。

 聴衆は、トランプ氏が登場する前から「トランプがいい! トランプがいい!」とシュプレヒコールを繰り返している人々だ。民主党やメディアをはじめとする敵対勢力が「自分を陥れようとしている」と主張し、怒りをぶちまけたくてうずうずしているトランプ氏にとって、これ以上うってつけの舞台があるだろうか?

 トランプ氏は、窮地に追い詰められた政治家には見えなかった。いつも通りエネルギッシュで、怒りに満ちて、冗談を連発し、陰謀論に取りつかれていた。むしろ、いつもより激しく怒っていた。

「民主党は、米国の有権者に対する深い憎しみと軽蔑を公言している」とトランプ氏が述べると、ブーイングと喝采が起きた。「彼らは、就任初日から私を弾劾しようとしてきた。私が立候補する前から弾劾しようとしてきた」

 聴衆はトランプ氏が冗談を言えば笑い、ブーイングを求めればブーイングし、あらゆる自慢話に歓声を上げた。「ここにいるほうがいい。集会は最高だ」とトランプ氏は聴衆に語り掛けた。「君たちは私を奮い立たせてくれる」

 聴衆は「あと4年、あと4年」とコールを繰り返した。

 トランプ氏は、弾劾訴追されたことで2期目を狙う来年の大統領選は有利になると考えている。保守派の怒りの波が、憎きリベラル派の対抗馬を吹き飛ばすだろうとみているのだ。

 陰謀家や闇の勢力が普通の米国人をおとしめようとしている──トランプ氏は、そんな暗い展望を口にして聴衆をたきつけると、弾劾調査を率いた下院情報特別委員会(House Intelligence Committee)のアダム・シフ(Adam Schiff)委員長や、前回大統領選で対立候補だったヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)元国務長官、民主党の大統領選候補ら、メディア関係者を次々と攻撃した。

 会場では、一人の女性が「お前はクビだ!」と書かれたプラカードを広げる一幕もあった。トランプ氏はまるで脅すように厳かに「彼女を追い出せ」と言い、聴衆は女性にやじを飛ばして「USA、USA」と叫んだ。

 トランプ氏は延々と逸話を披露し、とりとめなく不満を訴え続けた。そして、弾劾訴追は大したことではないと何度も繰り返した。「心配はしていない」とトランプ氏は主張した。「皆さんはどうか知らないが、私は楽しい時間を過ごしているよ」 (c)AFP/Sebastian Smith