【12月26日 AFP】2019年のラグビー界では、秋にW杯日本大会(Rugby World Cup 2019)が開催され、ファフ・デクラーク(Faf de Klerk)にけん引された南アフリカが3回目の優勝を果たした。また日本が予想以上の快進撃を見せ、史上初のベスト8入りを達成したことも大会を盛り上げた。AFPは今回、五つの項目で2019年のラグビー界をまとめた。

■AFPが選ぶ年間最優秀チーム 南アフリカ

 ラシー・エラスムス(Rassie Erasmus)ヘッドコーチ(HC)が立て直し、代表史上初の黒人主将、シヤ・コリシ(Siya Kolisi)に導かれた多文化チームのスプリングボクス(Springboks、南アフリカ代表の愛称)は、決勝トーナメントで日本とウェールズを撃破して決勝へ勝ち上がると、イングランド相手に32-12の完勝を収めてウェブ・エリス・カップ(Webb Ellis Cup、W杯の優勝トロフィー)を掲げた。

 チームの戦い方は、フォワードの馬力と中央の混戦での強さを生かしつつ、ボールを前に蹴り出して相手に強烈なプレッシャーをかけ、隙があればマカゾレ・マピンピ(Makazole Mapimpi)とチェスリン・コルビ(Cheslin Kolbe)の両翼のスピードを生かすというシンプルなものだった。

■AFPが選ぶ年間最優秀選手 ファフ・デクラーク

 大柄な選手の存在感が高まっているラグビー界にあって、W杯で見せた活躍は、小柄なデクラークにとっては一つの勝利だろう。イングランドプレミアシップのセール・シャークス(Sale Sharks)でプレーするデクラークは、2019年に飛躍のシーズンを過ごした。

 ワールドラグビー(World Rugby)が選出する年間最優秀選手の座はチームメートのピーター・ステフ・デュトイ(Pieter-Steph Du Toit)に譲ったが、デクラークはナンバー8のドウェイン・フェルミューレン(Duane Vermeulen)、SOハンドレ・ポラード(Handre Pollard)、「ビースト(野獣)」ことPRテンダイ・ムタワリラ(Tendai Mtawarira)のベテラン勢にも支えられながら、活発に動き回ってチームをけん引した。

 風にたなびくブロンドが目を引くデクラークは、洗練されたキック技術を披露したほか、ラック周辺でも厄介な存在となり、相手の守備陣を翻弄(ほんろう)した。身長172センチ、体重88キロとラグビー選手としては小柄だが、特に守備で体格差を補う勇敢さを持ち、ウェールズ戦で巨漢LOのジェイク・ボール(Jake Ball)とつかみ合った光景は大会のハイライトの一つになった。決勝後の控室で、パンツ一丁で英国のヘンリー王子(Prince Harry)と対面した場面も話題を呼んだ。

■AFPが選ぶ年間ベストゲーム W杯準決勝・イングランド対ニュージーランド戦

 オールブラックス(All Blacks、ニュージーランド代表の愛称)は日本大会でW杯3連覇を狙ったが、準決勝で彼らの前に立ちはだかったのが、歴史に残るプレーを披露し、19-7の衝撃的な勝利を収めたイングランドだった。

 マヌ・ツイランギ(Manu Tuilagi)が早々に先制トライを決めたイングランドは、先発復帰したジョージ・フォード(George Ford)の4本のペナルティーゴール(PG)で加点。アーディ・サベア(Ardie Savea)にトライを返されたが逃げ切り、W杯では2007年大会準々決勝のフランス以来、12年ぶりにニュージーランドに土をつけた。

 横浜国際総合競技場(International Stadium Yokohama)で行われたこの一戦には、ラグビーのあらゆる魅力が詰まっていた。試合はニュージーランド伝統の「ハカ(Haka)」を披露するオールブラックスをイングランドの選手がハーフウエーラインを越えて包囲する光景から幕を開けると、序盤はフォードの指示の下、コートニー・ロウズ(Courtney Lawes)やマロ・イトジェ(Maro Itoje)らフォワード陣が奮闘するイングランドが敵陣でボールを圧倒的に保持。まさかの展開に観客も席から身を乗り出した。

 サム・アンダーヒル(Sam Underhill)がジョーディー・バレット(Jordie Barrett)へ激しいタックルを浴びせてボールを奪い、その後のPG獲得につなげた場面は、エディー・ジョーンズ(Eddie Jones)HCが率いるイングランドが、攻撃が機能しないニュージーランドに対して心理的に優位に立っていたことを象徴していた。

■AFPが選ぶ年間最躍進チーム 日本

 2015年のW杯イングランド大会で南アフリカを破り、ファンの期待が高まっていたことは、開催国としてW杯に臨む日本にとっては後押しでもあり、同時に重圧でもあった。

 それでも日本は、アイルランドを破って見事に期待に応えると、台風19号(アジア名:ハギビス、Hagibis)の直撃によって国内で大きな被害が出る中、スコットランドも退けて史上初となるW杯ベスト8入りを決めた。

 準々決勝の南アフリカ戦では金星の再現はならなかったが、W杯でのエキサイティングなプレーを受けて、南半球対抗戦のザ・ラグビーチャンピオンシップ(The Rugby Championship)や、欧州の強豪で争うシックスネーションズ(Six Nations Rugby)へ日本を受け入れる議論も再燃している。

■AFPが選ぶ年間最優秀トライ 福岡堅樹(W杯プールA・アイルランド戦)

 日本がW杯準々決勝へ勝ち進んでいった過程では、松島幸太朗(Kotaro Matsushima)と福岡堅樹(Kenki Fukuoka)の両ウイングが次々にトライを決め、国内にその名をとどろかせた。

 特にアイルランド戦で福岡が決めたトライは、ラファエレティモシー(Timothy Lafaele)の巧みなオフロードパスを受けてフィールドにタッチするシンプルなものだったが、少し前には世界ランキング1位に立っていたアイルランドを逆転する値千金のトライだった。

 チームメートの輪の中から福岡が姿を見せると、小笠山総合運動公園エコパスタジアム(Ogasayama Sports Park Ecopa Stadium)に詰め掛けたファンは「日本」コールの大合唱。そしてファンも歓喜したこのトライによって、日本は世界の注目を集めた前回大会の南アフリカ戦と同様、かけがえのない金星を挙げた。(c)AFP/Luke PHILLIPS