【12月21日 AFP】警察から電話を受けた時、スメイエ・ユルマズ(Sumeyye Yilmaz)さんは、祈りがかなえられたと思った。8か月も行方不明になっていた夫のムスタファ(Mustafa Yilmaz)さん(32)が生きており、再会できることが分かったのだ。翌日、ムスタファさんはついにスメイエさんの元に帰ってきた。

 スメイエさんは警察から、ムスタファさんが10月21日に「発見」され、健康だと知らされていた。だが、夫は痩せこけ、手や顔が「氷のように冷たく」なっていることにスメイエさんは気付いた。

 スメイエさんは夫が拷問されたのではないかと恐れている。夫は無気力で、行方不明になっていた間のことについて何の説明もせず、ただ「隠れていた」としか話さない。

 スメイエさんはこれが事実ではないことが分かっている。なぜなら、理学療法士だった夫が失踪した2月9日は、新しい仕事を始めたばかりで姿を消す理由などなかったからだ。

 トルコ人権協会(Human Rights Association)のオズトゥルク・トゥルクタン(Ozturk Turkdogan)氏はAFPの取材に、2016年のクーデター未遂以降、28人が行方不明になっており、それらに治安当局のある部門が関係しているようだと述べた。

 治安当局は1990年代にも、反体制派だと疑われた人々に対し同じような手法を使ったという。

 行方不明となった28人はおそらく情報を得るために拉致されたのだろうと、トゥルクタン氏は指摘する。だが、クーデター未遂後の取り締まりでは数万人が逮捕されており、なぜこの28人が選び出されたのかは定かではない。

 内務省と警察当局は、これについてのコメント要請に応じていない。

 ムスタファさんは既に、政府がクーデターの黒幕だと糾弾する在米イスラム指導者フェトフッラー・ギュレン(Fethullah Gulen)師の教えに共感した人々が参加するギュレル運動に関与したとして禁錮6年を言い渡されている。だが今年初め、控訴中に釈放されていた。