■最高裁が聖地にヒンズー教寺院の建設を許可

 インドの最高裁判所は11月、ヒンズー教とイスラム教の間で帰属をめぐって対立していた北部ウッタルプラデシュ(Uttar Pradesh)州アヨディヤ(Ayodhya)にある聖地にヒンズー教寺院の建設を認めた。アヨディヤ聖地でのヒンズー教寺院の建設は、モディ氏が現在率いるインド人民党(BJP)が1980年代から公約として掲げ、この判決は同氏の支持者にとって大きな勝利を意味する。

 一方で、この聖地をめぐっては1992年、ヒンズー教徒の暴徒が460年の歴史を持つモスク(イスラム教寺院)を破壊した背景があり、最高裁の判決で、モスクの破壊が正当化され、今後、同様の破壊行為や暴力が増えるのではないかと批判する声もある。

■非イスラム教徒移民を対象にした新法

 11日にインド上院で可決された市民権改正法により、近隣3か国パキスタン、アフガニスタン、バングラデシュから不法入国した移民に対する市民権の付与は容易になるが、対象はヒンズー教徒、シーク教徒、ジャイナ教徒、仏教徒、キリスト教徒のみで、イスラム教徒は含まれていない。

 これについてモディ氏は、新法がイスラム教徒を対象外としているのは、これら3か国ではイスラム教徒が多数を占めており、迫害される危険がないからだとしている。

 この新法をめぐって国民の間で怒りが広まり、国内各地で大規模な抗議活動に発展している。抗議活動の中心となっているインド北東部では、新法によって、ヒンズー教徒が大半を占めるバングラデシュ移民に市民権が付与されるのではないかと懸念されている。

 スウェーデンのウプサラ大学(Uppsala University)のアショク・スワイン( Ashok Swain)教授はAFPの取材に、「インドの民主主義は、世俗的な特徴と密接に結び付いている」と指摘。「モディ氏が行っていることは、多数決主義の力による支配であり、そこには少数派の権利に対する譲歩がみられない」と述べた。

■インド人民党の次の目標は何か

 インド人民党の次の目標は、統一民法の制定と宗教別属人法の廃止だ。宗教別属人法では、結婚、家族、死などの問題についてさまざまな宗教的少数派向けの規定が定められている。

 米シンクタンク「ウィルソン・センター(Wilson Center)」のマイケル・クゲルマン(Michael Kugelman)氏は、「インドで展開されているのは、ヒンズー至上主義的な政策の積極的な推進だ。この政策によって、長年インドの民主主義を特徴付けてきた世俗主義と宗教多元主義が脅かされている」と語った。(c)AFP/Aishwarya KUMAR