【12月16日 AFP】あまり知られていないものの、インドネシアに存在する氷河の融解が、ここ数十年で急速に進み、10年後には消失する可能性があるとする研究結果が先週、発表された。米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された今回の論文は、気候変動が熱帯地域の氷河にもたらす差し迫った脅威を強調するものとなっている。

 スペインの首都マドリードでは15日、国連(UN)の気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)が閉会。そこから数千キロ離れたインドネシア・パプア(Papua)地方の山岳地帯のほか、アフリカやペルーのアンデス山脈(Andes)にある少数の氷河をめぐっては、気温上昇を抑制できない場合に起こり得る事態について早くから警鐘が鳴らされてきた。

 論文の共著者で、米オハイオ州立大学(Ohio State University)の教授を務めるロニー・トンプソン(Lonnie Thompson)氏は、「(パプアの)氷河は比較的高度が低いので、最初に消えてしまうだろう」と指摘。「こうした氷河は『炭坑のカナリア』だ」と述べた。

 アイスランドでは今夏、気候変動により同国で初めて氷河「オクヨクットル(Okjokull)」が消失。同国にある約400もの氷河も、同じ運命をたどる恐れがあるとされている。

 氷河は通常、寒冷な国々に存在するイメージがあるものの、ニューギニア(New Guinea)島の西半分を占めるインドネシア領パプアの氷河は、世界的な気温上昇の影響を示す重要な指標となっている。

 論文の共著者の一人で、インドネシアに拠点を置く氷河学者ドナルディ・ペルマナ(Donaldi Permana)氏は、「熱帯地域の氷河はたいてい小規模なため、他の大規模氷河や氷床よりも気候変動による変化に早く反応する」と説明する。

 パプアの氷河は以前の推定によると、過去数十年で約85%縮小。さらに先週発表された論文によれば、かつて20平方キロにわたって広がっていた氷河は、現在0.5平方キロ未満にまで縮小。さらに過去数年間で、氷河の縮小ペースは5倍超に上昇した。

 ペルナマ氏は、「氷河はもはや形成されることなく、後退しかないことから、状況は懸念すべき水準になった」とし、「氷河は10年以内に消失する恐れがある」と指摘。

 ただ、「温室効果ガスの排出量を削減し、植林を増大すれば、パプアでの氷河後退を減速させられるかもしれない」と述べた。それでも融解を「食い止めるのは極めて難しいと考えている」という。

 また氷河の消失は、環境的な影響のほか、氷河を神聖なものとみなす先住民族にとっても文化的な損失になり得る。

 トンプソン氏は、「山々や渓谷は彼らの神様の腕や足であり、氷河は頭部だ」と述べ、「神様の頭がもうすぐ消えてしまうことになる」と語った。(c)AFP/Dessy Sagita and Peter Brieger