【12月23日 AFP】バドミントン男子、世界ランキング1位の桃田賢斗(Kento Momota)は、15日に閉幕したBWFワールドツアーファイナルズ(BWF World Tour Finals 2019)で優勝して史上最多の年間11勝を挙げ、競技史上でもまれに見る成功のシーズンを送った。

 今季の桃田は全英オープン(YONEX All England Open Badminton Championships 2019)やアジア選手権(Badminton Asia Championships 2019)、世界選手権(TOTAL BWF World Championships 2019)を制すなどバドミントン界を席巻し、快進撃の締めくくりとなるファイナルズでは、決勝でインドネシアのアンソニー・ギンチン(Anthony Sinisuka Ginting)を逆転で下し、優勝を飾った。

 桃田は今季公式戦73試合を戦い、わずか6回しか負けていない。年間11勝は、2010年に10勝を挙げたマレーシアのリー・チョンウェイ(Chong Wei Lee)氏や、中国の林丹(Dan Lin、リン・ダン)といった大選手でも達成できなかった記録だ。

 桃田は今季の好成績に自分でも驚いていると認めつつ、「リー・チョンウェイ選手の記録を破ったとはいっても、自分は選手としても、人間としても彼と比べられるレベルにはまだないと思う」「今の自分はまだレジェンドプレーヤーではないと感じるが、これからも頑張って良いプレーを続けたい」と話した。

 各種タイトルを総なめにしてきた桃田にとって、唯一欠けている個人でのビッグタイトルが五輪の金メダルだ。そしてけがやスランプ、なんらかの不祥事がなければ、桃田は2020年夏の東京五輪で金メダルに最も近いとみられている。

 違法カジノに出入りして協会から出場停止処分を科され、前回2016年のリオデジャネイロ五輪を棒に振り、五輪の映像はつらくて見られなかったという桃田にとって、五輪の金メダルは獲得できればとりわけ大きな感慨があるだろう。

 五輪について、桃田はウェブサイト「オリンピック・チャンネル(Olympic Channel)」で「今でも申し訳ないことをしてしまったと思っている」「五輪に執着がないとは言わないが、前回たくさんの人に迷惑をかけ、試合に出られなかった分、東京では支えてくれた人に恩返しがしたい」と話している。

 2017年に謹慎が明けたときには、ランキングも282位まで落ち込んでいたが、そこからランクを一気に戻していき、日本の男子選手として初めて世界選手権のシングルスを制覇した昨年8月には、7位に急浮上。そして今年の大会では、ランク1位の絶対王者として連覇を達成した。

 姉のバドミントンの練習について行き、「いつの間にか始めていた」と話す幼い頃には、ここまでの活躍は想像していなかったはずだ。

 桃田の一強時代は、男子バドミントンを引っ張ってきたリー・チョンウェイ氏と林丹という大物二人の衰退と共に訪れた。37歳のリー氏は今年6月、鼻のがんとの闘病の末に引退を発表。その宿敵である36歳の林丹は、東京五輪で3個目の五輪金メダルを獲得して有終の美を飾ることを目指しているが、出場も危うい状況だ。

 しかし、元デンマーク代表のヘッドコーチで、ワールドツアーファイナルズではテレビ解説者を務めたスティーン・ペダーセン(Steen Pedersen)氏は、桃田を「完全無欠」の選手と評し、「男子シングルスに必要なあらゆるスキルに優れ、弱点はほとんど見当たらない」と話している。

 五輪はまだ半年以上先だが、桃田の圧倒的な強さに、日本ではすでに金メダル獲得の期待が高まっている。(c)AFP/Peter STEBBINGS