【12月31日 AFP】ねじれた石造物、エキゾチックな彫像、息をのむような空想力──東南アジアの熱帯地方か、シュールレアリスムの絵画でしか目にすることがないような光景が広がっている。だがここは、インドでもカンボジアでもなく、フランス南東部だ。この風変わりな建造物を考え出したのは、古代の神秘家や画家のサルバドール・ダリ(Salvador Dali)ではない。1人の郵便配達員だ。(※この記事は、2019年10月12日に配信されました)

「シュバルの理想宮」は、「郵便配達員のシュバルさん」の呼び名でも知られるフェルディナン・シュバル(Ferdinand Cheval)氏が手掛けた。故郷のリヨン(Lyon)南部オートゥリーブ(Hauterives)にある。

 シュバル氏は郵便配達をしながら仕事の合間にとりわけ奇妙な形の石を拾い集め、自らの手で、1879年から1912年まで33年かけてこの「宮殿」を造り上げた。世界中のナイーブ・アート(正式な美術教育を受けていない作家による芸術)建築において最もとっぴな例の一つとして知られ、近年は年間数万人が訪れている。1924年に88歳でこの世を去ったシュバル氏も、そのことに喜んでいるに違いない。

 宮殿が完成すると、シュバル氏は自身の墓の建築に乗り出した。シュバル氏は当初、自身の理想宮に埋葬されることを望んでいたが、教会と地方当局に反対され、理想宮を完成させた後、7年かけて自身の墓を造った。理想宮と同じく凝った細工が施されたこの墓所でシュバル氏は眠っている。(c)AFP/Myriam CHAPLAIN RIOU