【12月16日 AFP】オーストラリア最大の都市シドニー(Sydney)が数週間にわたって森林火災の煙に覆われており、医師らが16日、「公衆衛生における緊急事態」に直面していると警鐘を鳴らした。

 一連の火災でこれまでに6人が死亡、住宅700棟以上が焼かれ、少なくとも300万ヘクタールが延焼している。複数の病院で、救急外来の利用者数の劇的な増加が報告されている。

 この数か月、同国各地では温暖化が拍車を掛けている数百件の森林火災が発生し続けている。シドニー北部では「メガ火災」と呼ばれる大規模な火事が複数の家屋を一晩で焼き尽くした。南西部パース(Perth)で起きた火災は市街地に近づきつつある。

 医師や研修医ら計2万5000人を擁する王立オーストラレーシアン医科大学(Royal Australasian College of Physicians)を含む20以上の医療団体からなる「クライメイト・アンド・ヘルス・アライアンス(Climate and Health Alliance)」は16日、同国政府に対し有害な大気汚染に対処するよう求める共同声明を発表した。

 環境問題に対する政策を求める医療関係者らでつくる同団体は「ニューサウスウェールズ(New South Wales)州の大気汚染は公衆衛生における緊急事態」だと訴えた。また同州の複数の場所では、森林火災により「『有害』とされる基準値の最大11倍」の大気汚染が起きており、森林火災の煙は「微小粒子状物質PM2.5の濃度が高く特に危険だ」と指摘した。

 さらに同団体は、温暖化は森林火災を悪化させ「人間の健康に計り知れない影響」を及ぼしているとして、政府に対し二酸化炭素(CO2)排出量の削減に向けた緊急対策を講じるよう要求した。

 ニューサウスウェールズ州の保健当局は、12月11日までの1週間に呼吸器疾患で救急外来を訪れた患者数は、過去5年の平均値より48%増加したと発表。シドニーの大気状態が急激に悪化した10日には、外来患者数は80%増を記録した。翌日には、最大2万人の市民が大気汚染に抗議するデモ行進に参加した。(c)AFP/Holly ROBERTSON