【12月14日 AFP】英下院(定数650)総選挙で与党・保守党が大勝したことを受けて、専門家らは13日、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)は不可避となったが、より穏健な離脱が行われる可能性が出てきたと指摘した。

 大勝により、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)首相は議会で離脱協定案を可決させ、2020年1月31日に離脱を実行することが可能となった。

 しかし、離脱後も英国・EUの双方で企業が円滑に事業を継続できるようにするため、ジョンソン氏は新たな貿易協定についてEUと協議しなければならない。

 総選挙前のジョンソン氏は、欧州研究グループ(ERG)に属するEU懐疑派・離脱強硬派の保守党議員らに頼らざるを得ない状況で、ERGはEUとの結び付きが緩い貿易協定を結ぶようジョンソン氏に圧力をかけてきた。

 英シンクタンク「欧州改革センター(CER)」のチャールズ・グラント(Charles Grant)所長は、「半数を大きく超える議席を獲得したことで、ジョンソン氏は望めばERGを無視し、より穏健なブレグジットを行うことが可能となった」と指摘した。

 ブレグジットが総選挙の争点であったにもかかわらず、ジョンソン氏の離脱協定案に関してはほとんど吟味されず、今後結ばれる貿易協定に関してはそれ以上に議論されてこなかった。ジョンソン氏自身も、EUと緊密な連携を維持したいのか、それともきっぱり離脱したいのかについて、あいまいな態度を示してきた。

 ジョンソン氏は、カナダとEUが結んだような自由貿易協定(FTA)を結ぶと主張してきた。このFTAでは、EUの規制からの自由度が増す一方、貿易の障壁とコストが増加することになる。

 しかしジョンソン氏は今週、イングランド北東部の工場での遊説で、「関税ゼロ、クオータ(割当枠)ゼロの、EUとの関係を一切損なうことのない離脱」を実現し、「サプライチェーンを守る」計画を明らかにした。

 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のトニー・トラバース(Tony Travers)氏は、保守党が製造業界の支持を得るのに成功したことで、ジョンソン氏は行動せざるを得なくなる可能性があると指摘する。

 保守党が、製造業界を支持基盤としている最大野党・労働党から多くの議席を奪ったことで、ジョンソン氏の今後の政治的成功は、ブルーカラー労働者の職を守れるかにかかることとなった。

 内容はさておき、ジョンソン氏は2020年12月31日までに設定された離脱後の移行期間中に、EUとの自由貿易協定を結ぶ方針を示している。専門家によると、ジョンソン氏が移行期間の延長を拒んだ場合、限定的な貿易協定が結ばれる可能性が高いとみられている。(c)AFP/Alice RITCHIE / Robin MILLARD