【12月14日 AFP】2020年にドイツの作曲家ルートウィヒ・ベートーベン(Ludwig van Beethoven)の生誕250年を迎えるに当たり、人工知能(AI)を使って未完の交響曲第10番を完成させるプロジェクトが進められている。

 ロマン派音楽の先駆けとなったベートーベンは、世界的に有名な「歓喜の歌(Ode To Joy)」を含む交響曲第9番と同時に第10番の作曲に着手したが、第10番については早々に断念し、1827年に57歳で死去する前に残したのはいくつかの断片と草稿だけだった。今回のプロジェクトでは、機械学習ソフトにベートーベンの全作品を学習させ、第10番の未完部分をベートーベン風に作曲させている。

 プロジェクトチームによると、AIが数か月前に完成させた最初の作品は機械的過ぎる上に反復が多過ぎるものだったが、最新版はそれよりは期待できそうだという。プロジェクトを後援する独通信大手ドイツテレコム(Deutsche Telekom)は、成果を音声認識などの技術の開発に生かしたいとしている。

 一方、ドイツではベートーベンは自国が生んだ最も有名な音楽家として敬愛されており、AIを使って未完の作品を完成させるプロジェクトに対しては遺産の保護という観点で懸念の声も上がっている。

 これまでにも、ヨハン・セバスチャン・バッハ(Johann Sebastian Bach)やグスタフ・マーラー(Gustav Mahler)、フランツ・シューベルト(Franz Schubert)の作品を基に同様の試みが行われてきたが、見事な出来栄えと言えるものではなかった。今年完成したシューベルトの交響曲第8番については、複数の批評家がシューベルト作品というよりむしろ米映画のサウンドトラックみたいだと評していた。

 ベートーベンの交響曲第10番の完成版は来年4月28日、生まれ故郷の独西部ボンで、生誕250年祝賀行事の目玉としてフルオーケストラで演奏される。(c)AFP/Mathieu FOULKES