■「なりすまし」ニュースサイト

 ダートマス大学(Dartmouth College)のブレンダン・ナイハン(Brendan Nyhan)教授は、こうした党派的サイトを「なりすましニュースサイト」だと断言。ニュースメディアを装いながら、人々が求める多様で公平な報道をしていないと批判している。

 ナイハン教授は米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)への寄稿で、「2020年米大統領選を控えて、なりすましニュースサイトはますます増殖するだろう。大勢の有権者を誤った方向に誘導し、あらゆるニュースメディアに対する疑念や不信をあおり立てる恐れがある。非常に多くの米国人が信頼する地方紙も例外ではない」と警告した。

 政治的動機に基づいたニュースサイトは、保守・リベラル共に増大傾向にある。

 ファクトチェック(事実検証)サイト「スノープス(Snopes)」の調査では、テネシー、オハイオ、ミシガン、ミネソタの各州で地元紙の体裁をとるニュースサイトが、いずれも保守派の市民運動「ティーパーティー(Tea Party)」とつながりの深い活動家3人によって立ち上げられたものだったことが分かった。運営母体は「スター・ニュース・デジタルメディア(Star News Digital Media)」を名乗り、「2016年米大統領選でドナルド・トランプ(Donald Trump)氏に投票した各州の住民の関心に沿った、事実に基づいた保守的な見解と特集記事」を掲載すると約束している。

 一方の左派も、リベラル派の活動家グループ「アクロニム(Acronym)」の資金援助を得て新設された「クーリエ・ニュースルーム(Courier Newsroom)」が、バージニア、ウィスコンシン、アリゾナ、ミシガンの各州でニュースサイトを立ち上げた。編集長はバイス・メディア(Vice Media)出身のリンゼー・シュラップ(Lindsay Schrupp)氏で、「100%の透明性」を確保しつつ、2020年米大統領選へ向けて「人々の生活により関連性の高い事実と本物の情報」を提供するとしている。

 これに加え、ソーシャルメディアを通じた政治宣伝の拡散を狙って、政治家やロシアのサイバー組織らが次々と立ち上げた「ニュースサイト」も数多くある。これらの「ニュースサイトの洪水」に、読者が混乱する可能性は非常に高い。

 カルバー氏は、「こうしたグループがニュースサイトの体裁をとるのは、地元の報道機関への人々の信頼が今でも厚いからだ。彼らはその信頼心に付け込んでいるのだ」と注意を喚起した。(c)AFP/Rob Lever