■魔女狩りの「台本」

 2人の子どもを持つレイチェルさん(55)も、「サングマ(sanguma)」と呼ばれる魔術を使ったと非難された経験がある。

 レイチェルさんの人生が一変したのは2017年4月、近くに住む部族の男性の葬儀に家族とともに行った時のことだ。帰り際に子どもを捜していると、死亡した男性の息子に体をつかまれた。

 その時レイチェルさんは知らなかったが、男性が死んだのは魔女たちの拷問が原因で、レイチェルという名の魔女が関与しているといううわさが広がっていたのだった。

 魔女狩りについて研究をしているオーストラリア国立大学(Australian National University)のミランダ・フォーサイス(Miranda Forsyth)氏は、魔女狩りの残虐行為にはパターンがあると指摘する。魔女の疑いがある場合、どのように暴力で対抗すればいいかという「台本」が、エンガ中に広がっているのだと言う。

 「経済、社会、文化の激変に直面し不安が高まっており」、それに対処する手段として人々は魔女狩りを行っていると、フォーサイス氏は説明する。

 当局は、既に広まってしまった毒を中和することは難しいと分かっている。

 恐怖は「被害妄想を生み、あらゆる場所をめちゃくちゃにする」とルッツさんは語った。(c)AFP/Andrew BEATTY