【12月15日 東方新報】中国の考古学者・裴文中(Pei Wenzhong)氏が、北京市・房山区(Fangshan)周口店(Zhoukoudian)竜骨山(Longgushan)山頂で北京原人の完全な頭蓋骨化石を発見して12月2日でちょうど90年。北京原人遺跡発掘研究工作の担当機関である中国科学院古脊椎動物古人類研究所(IVPP)は、北京で記念イベントを開催、歴史を回顧し未来を展望した。

 北京原人は、推定68万~78万年前(更新世時代)に存在していたアフリカに起源を持つ原人の一種。現生人類の祖先ではなく、何らかの理由で絶滅したと考えられている。

 IVPPの呉秀傑(Wu Xiujie)研究員が記念イベントで行った発表によると、最新の研究では30万年前から10万年前の間、中国国内の地域には多種多様な古人類が生存していた可能性がある。この20年の間に発見された新たな古人類化石の研究によれば、更新世晩期には古老型智人、早期智人といった欧州古老型人類と同様の特徴を持つ多くの古人類が生存しており、地域的な連続性や多様性を示している。

 IVPPの前身は農鉱省地質調査所新生代研究室で、1929年4月に北京で設立され、周口店の北京原人遺跡発掘と化石研究を開始。当時は内憂外患の時代であり、研究室の主要責任者・IVPP初代所長である楊鐘健(Yang Zhongjian)氏の指導の下、裴文中氏ら考古学者たちが北京原人頭蓋を発掘、研究を続けてきた。しかし1941年の戦争中、調査のために米国へ輸送する途中、頭蓋標本は遺失し、いまも行方不明だ。

 1960年にはIVPPに改名。その後も古人類学の発掘、研究は積極的に進められ、北京原人の化石は11体発見されている。2003年には「田園洞人」の化石34体が発見された。

 IVPPは周口店以外にも多くの化石発掘、研究を展開しており、「棘華青島龍」や「藍田猿人」「黄河象」などの化石の発掘で知られる。8万~12万年前の東アジア地域の早期現代人化石の発見と研究は、現代人アフリカ起源説の一部分の観点を否定して、現代人東アジア出現・拡散という新仮説を提示し、東アジア人類進化研究における重要な材料を提供。中国古人類進化研究を国際先端レベルに引き上げることになった。

 IVPPは現在、古脊椎動物学、古人類学、地層学研究の第一線の学術機構であり、アジアで最も豊富な標本館を持ち、世界最大規模の化石修復チームを擁している。鄧濤(Deng Tao)所長は「グローバルな視野での科学者チームを擁し、国際古生物学界、進化生物学界のために重要な影響力を持ち、関連研究をリードし、強い求心力を持つ研究拠点にしていきたい」との展望を語った。(c)東方新報/AFPBB News